世界各国でワクチン開発は急ピッチで進められている(写真:時事通信) 画像を見る

世界中で日夜、研究開発が続けられている新型コロナウイルスへのワクチン。日本も来年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向け、安倍晋三首相は開発が順調に進んでいることをアピールしていた。実際、日本での新型コロナのワクチン開発の状況はどうなっているのか。

 

「いま最も注目されているのが、DNAワクチンです。これは、弱毒化したウイルスなどを使うワクチンとは異なり、ウイルスの遺伝子情報を体内に注入して、抗体を作らせようというもの。英米などで開発しているワクチンにくらべて安全性が高く、製造のスピードも断然速いといいます」(医療関係者)

 

このDNAワクチンの開発に実際に携わるなど、日本のワクチン開発の最前線にいるのが、大阪大学大学院の臨床遺伝子治療学・森下竜一寄附講座教授だ。取材を申し込むと、「ADEのリスクについて、僕に聞きますか?」と苦笑いしつつも、真摯に応じてくれた。

 

そもそも、ワクチンとは発症や重症化を予防するために投与する、弱毒化または無毒化した抗原のこと。あらかじめ投与して病原体に対する抗体を獲得しておき病原体が侵入してきても感染あるいは重症化を抑えられるという仕組み。しかし、本来はウイルスから体を守るはずの抗体が逆に細胞への感染を促進し、重症化を引き起こしてしまう現象がADE(抗体依存性感染増強)だ。

 

「ADEというのは、どのワクチンでも起こるリスクはあります。デング熱のワクチンでは後に重症化することがわかり、使えなくなりました。ただし、実際に開発されたワクチンではほかにあまりそういった事例はありません。今回の新型コロナワクチン開発においてもADEの懸念はあります。厚労省も含め、ワクチン開発している研究者は、みんな気にしています。

 

ADEのリスクは事前にはわからないのです。動物実験段階ではワクチンを打った動物を新型コロナウイルスに感染させますが、そもそも動物での感染モデルでは、大きな症状がないので重症化するかどうか確認できないかもしれません。少なくとも、従来行われたDNAワクチンの臨床試験ではADEが懸念されるデータは今のところないです」

 

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