7月3日から九州を中心に、日本列島の広い範囲にわたって猛威を振るった「令和2年7月豪雨」。洪水被害や土砂災害による死者67人、行方不明者13人……。
国土交通省によると、豪雨によって河川の堤防が決壊したり、氾濫したのは九州全県と岐阜、徳島、高知、愛媛県の102河川、117カ所にも及んだ(11日11時現在)。
今回とくに大きな被害を出した熊本県人吉市では、中心部を流れる球磨川の水位が過去最高の7.25mにも達した。この水位は、’65年の水害時で、観測史上最高を記録した5.05mの1.4倍の数値だ。
実は全国の河川における「氾濫危険水位」超過件数は、年々増え続けている。’14年に83件だった水位超過が、’18年には474件となり、4年間で5.7倍も増加するという、まさに異常事態なのだ。
「気候変動が豪雨増加の原因だと思います。今回、大分県日田市、熊本県山鹿市、福岡県大牟田市などで、48時間の積算降水量が観測史上1位を更新しました。今後も爆弾低気圧や台風の巨大化により、これまでの治水対策だけでは河川の氾濫による洪水被害を受ける可能性は十分にあります」
こう警鐘を鳴らすのは、さまざまな災害データを基に、地震、津波、洪水などのリスク分析を行う、災害危機コンサルタントの堀越謙一さん。
昨年10月、東日本を襲った台風19号の豪雨によって、140カ所の堤防が決壊するなど、関東、東北を中心に多くの河川が氾濫したことは、まだ記憶に新しい。台風19号の直後、本誌は堀越さんの協力のもと、全国の「氾濫危険河川」をリストアップした。
今回の豪雨で氾濫した、福岡県の筑後川は、その中の1つだった。“スーパー豪雨”が、続々来襲するようになった日本。今後危ない河川、水害危険エリアはどこか? 堀越さんに再度「氾濫危険河川」を検証してもらった。
「今回は、降水量の多い地域を中心に、前回と同じく河川の形状、高さ、勾配、支川の数などの特徴を比較しながら、分析しました。これらを国土交通省や自治体のハザードマップと照らし合わせて、危険な河川と水害リスクの高いエリア20カ所を絞り込みました」