かねて予想されていた感染者数の増大が現実のものとなり、「第3波の襲来!」と連日の報道が激化している。私たちは不安をあおられるばかりだが、第1波、第2波をへた今、その経験をもとに医療の現場も進化しているーー。
「じつは第1波のころと比べると、死亡率は5分の1程度に低下しています。個々の症例によって一概には言えませんが、数字だけを見れば5人のうち4人、今なら助けられた命があるかもしれないということです」
こう語るのは、日本感染症学会専門医で、東京歯科大学市川総合病院の寺嶋毅教授だ。
現在、“第3波”の襲来ともいうべき、新型コロナウイルスの全国的な感染が急速に広がっている。10月末以降、東京をはじめ、大阪、北海道、兵庫などの新規感染者数は過去最高を記録するなど、その勢いは日を追うごとに増す。
だが、感染者が急増する一方で、死亡率は低下しているのも事実だ。これはいったいどういうことなのか、寺嶋教授が解説する。
「現在は検査体制が拡充されたことにより、早期発見、早期治療が可能になりました。第1波のころは、発熱し、せきなどの症状が出ている患者さんでも、自宅待機を命じられ、なかなか診断までたどり着けないケースがありました。そのため、病院に来たときにはすでに重症化している、ということも。今はそういった事態は少なくなりました」
また、最前線で奮闘する医療従事者たちの治療経験が積まれてきたことも、大きな要因だという。
「たとえば、抗ウイルス薬のレムデシビルや、抗炎症・免疫抑制作用のあるデキサメタゾンなど、どの症状のときにどの薬を投与するのか、その指針が明確になってきたことは大きいでしょう。さらに、第1波のころには知られていなかったのですが、新型コロナウイルスの合併症として、血栓症が多いことがわかってきました。血液検査や画像検査を行い、肺や脳の血管を詰まらせる血栓の疑いがある患者さんには抗血栓薬を早期に投与するなど、治療の選択肢が増えたことは確かです」
加えて、都内のコロナ患者受け入れ病院で働く別の医師にも話を聞いたが、「医療体制がシステム化されてきた」と教えてくれた。
「初期のころは、どこで検査を行うか、どこに隔離をするか、院内のどこを通って搬送するかなど、何も決まっていないなかで治療に当たっていました。今ではその医療体制がきちんと整い、薬の投与のタイミングも早まっています」
だが、検査、医療体制が整ってきたからといって安心はできない。猛威をふるいそうな第3波を乗り切るためにも、あなた自身が緊張感を持って、予防対策を講じることが必須である。
「女性自身」2020年12月15日号 掲載