■「時限爆弾を抱えているようなもの」
木場氏がこれほど警鐘を鳴らすのは、老人介護保健施設という業態ならではの特徴もあるからだという。
「そもそも『老健』というのは、病院に入院していた高齢者が在宅療養に戻るためのリハビリなどを行う施設です。
つまり施設内には、退院したばかりの高齢者がたくさんいるということ。通常の高齢者よりも体調が万全ではないことも多いため、感染リスクは高い。ウイルスが広がれば、その分だけ重篤化する人や死亡者も増えやすいのです。
だから、私たちは大阪府に何度も『高齢者施設での感染者は、たとえ無症状であってもすぐに入院させてください!』と訴え続けてきました。
このまま施設内に感染者を放置し続けることは、いずれクラスター化する“時限爆弾”を抱え続けるようなものなのです」
取材中も木場氏のもとには緊急の電話連絡が入り、そのたびにインタビューは中断した。
「今、まさにクラスターが発生している施設があって……。そこに応援職員を送らなければならないので、調整をしているところなんです」
木場氏の言葉からは、切羽詰まった状況であることがひしひしと伝わってきた。
「新型コロナウイルスに感染している高齢者は、あっという間に重症化することもあります。
病院で入院中だったら、急変しても対処できるでしょう。しかし施設で待機している間に、症状がいきなり悪化したらどうなるでしょうか。
まずは検査してから受入れ先の病院を探し、そこから搬送しなければなりません。手遅れになる可能性が高まるのは、想像に難くないでしょう。
これ以上、助かるはずの命を失いたくない。そのためにも吉村知事が早急に対策を講じてくれることを、切に願っています」
高齢者施設でのクラスター化は、死亡者の増加に直結する。一刻も早い対策が必要といえそうだ。
「女性自身」2021年2月16日号 掲載