「新型コロナワクチン、接種しますか?」医師23人アンケート
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■ビッグデータの協力になるためにも受ける

 

まずは自分が見本となって、打つ姿勢を見せたいというコメントも複数寄せられた。

 

《ワクチンを打つことで感染しづらくなるのと、症状がひどくならない可能性が上がるのでメリットのほうが大きいと考えているが、医療従事者としてまず先に打つことが、一般の方への安心にもつながると考えている》(廣瀬能華先生、美容皮膚科)

《現段階ではほかに手段がなく、医療従事者としてまず自分が接種してから患者にすすめるべきだと考えている》(おおたわ史絵先生、総合内科専門医)

 

個人的な視点だけでなく、社会的観点による意見も散見された。

 

《ワクチン接種することで集団免疫を獲得しないと新型コロナウイルスの蔓延は終わらない》(竹内聡美先生、呼吸器内科)

《新型コロナウイルスによって社会活動が制限されている現在、しない理由がない》(濱木珠恵先生、内科・血液内科)

《未知のワクチンだが、副作用が出るなら(自分が打って)その情報を公開する義務がある》(前出・渡邊先生)

《ビッグデータの協力になる》(井上留美子先生、整形外科)

 

肯定派のスタンスで、副反応について触れられたコメントを見ていくと、次のような意見が。

 

《ワクチンによる死亡はなく、新型コロナウイルスの死亡率が多い》(本田まりこ先生、皮膚科)

《すでに海外で報告されている副反応、アナフィラキシーショックの確率は小さく、治療可能だと考える。接種しないリスクのほうが大きい》(山口トキコ先生、肛門科)

《有効性が高いデータが出ているし、副反応も許容範囲》(板根みち子先生、循環器内科)

 

このように、接種に対する前向きな意見が多いが、今回のワクチンで議論になる理由の一つに、製法がある。新型コロナウイルスワクチンは、これまでにない遺伝子を使った方法で作られたワクチンなのだ。

 

世界ですでに接種されているファイザー社製とモデルナ社製のワクチンはmRNAワクチン、アストラゼネカ社のワクチンはウイルスベクターワクチンと呼ばれる“遺伝子ワクチン”だ。

 

総合内科専門医のおおたわ史絵先生は次のように説明する。

 

「従来のワクチンは、ウイルスの抗原の一部分に近いものを弱毒化させて体内に入れる『弱毒性ワクチン』や『不活化ワクチン』ですが、今回のコロナワクチンは、ウイルスに対する抗体を作るための核酸を体内に入れ、それが体内でDNAやRNA遺伝子を複製させるというまったく新しい作り方をとっています。そのため、長期的な副反応などが未知数という側面があるのも事実です。新しいものに対して不安を抱くのは、人間として当然のことでしょう」

 

医療法人康梓会Y’sサイエンスクリニック広尾の日比野佐和子先生も、人々が不安になることを理解しつつ、ワクチン研究が“現在進行形”であることを強調する。

 

「これまでのワクチン開発とは異なり、史上最大規模の財政的・人的資源の投入がごく短期間で行われているのが今回のワクチン開発の特徴です。つまり、副反応を含めたワクチンのデータもものすごい勢いで蓄積されていますから、さまざまなことが見えてくるスピードも別格なのです」

 

ただし、海外でもワクチンの接種が始まったのは、ほんの1~2カ月前のこと。まだまだ未知である副反応に対する不安は、先生たちの反応からもうかがえる。

 

《コロナ感染が流行しているなか、乳がん発生も減少せず続いている。医療者として、がん治療をきちんと行うためにも、ワクチンの短長期的な影響について不安がないとはいえないが、打つ》(土井卓子先生、乳腺専門医)

《短期間で開発され、長期的なリスクについては不明なワクチン接種にまったく不安がないわけではないが、幸い自分には特に強いアレルギーがない(ため打つ)》(亀井倫子先生、ペインクリニック内科)

 

一方、ワクチン接種を《見送る》と答えた慎重派の先生たちからは次のような意見があった。

 

《新型コロナはインフルエンザよりもはるかに死亡率、罹患率が低い疾患。しかもほとんどの人が感染しても無症状。国民全員がワクチンを受ける必要性があるのか疑問》(小林有希先生、内科)

《ワクチンを打つことによるベネフィット(利益)とリスク(不利益)を天秤にかけて十分に検討する必要がある》(正木稔子先生、耳鼻咽喉科専門医)

《従来のワクチンの製法とは異なる遺伝子型ワクチンで、副反応がわかっていないという段階で使用を開始するのは危険。ワクチンを打つ前に必ず副反応を調べる必要がある》(星子尚美先生、内科)

 

いずれも、今回のワクチンが異例の状況下で、短期間で開発されたことに対する懸念だ。

 

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