3月に政府の機関から発表された、最新の地震予測地図。危険性が浮き彫りとなった地域もあるが、「まだまだ多くの地域に巨大地震のリスクがある」と専門家は語るーー。
「今回政府の機関が発表した最新版の地震予測地図は、北海道南東部から首都圏〜東海〜近畿地方を通って四国地方まで、“太平洋側に”高い確率で巨大地震が発生する危険性を指摘しています。今後もその周辺海域を震源として巨大地震が発生する可能性は十分に考えられますが、危険エリアは太平洋側だけではないのです」
こう警鐘を鳴らすのは、地震や水害など過去に起きたさまざまな災害のデータをもとに分析を行っている、災害危機コンサルタントの堀越謙一さん。
3月26日、政府の地震調査委員会は、’20年版「全国地震動予測地図」を公表した。同委員会は、全国を250メートル四方の区画に分け、約600万地点の地震リスクを評価。地図上で、「30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率」を色別で詳しく示している。
今回の発表では、太平洋側の広い地域において、「26%」以上の確率で巨大地震が30年以内に発生するということがわかった。これらの地域は、とくに「海溝型地震」(陸側のプレートと海側のプレートの境界である海溝やトラフ付近で発生する地震)が懸念されている。
さらに同地図では、都道府県ごとの特定の地点(県庁所在地の市役所や振興局)を揺れが襲う確率も発表している。
「この数値は、“この場所で地震が発生する”という確率を表しているわけではありません。周辺域で発生した地震によって、市役所や振興局周辺の地域が、30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率を掲載しているのです」(堀越さん・以下同)
堀越さんは「日本海側にも危険なエリアがある」と強く語る。
「日本海側の内陸地域では、大陸プレートのひずみによって蓄えられたエネルギーが陸地の下まで伝わり、活断層が破壊されることによって発生する『内陸型地震』の危険性があります。太平洋プレート、フィリピン海プレートの沈み込みは、大陸側プレートの下へと続いています。内陸地域にもそのゆがみは影響を及ぼしているため、マグニチュード7以上の地震が発生する可能性があるのです」(堀越さん・以下同)
そこで本誌は、過去に発生した膨大な地震データをもとに、政府発表だけではわからない最新危険エリアを堀越さんに分析してもらった。
その結果、太平洋側では、宮崎県沖に海溝型地震の懸念があることがわかった。そして、内陸型地震の危険がある日本海側地域・内陸部からは、京都市、鳥取市、新潟市周辺が危険エリアとして挙げられた。
「日本列島の沿岸部や内陸部は、1000年以上前から、プレートの沈み込みによる活動によって、巨大地震の発生を繰り返しています。指摘した宮崎県沖、そして京都市、鳥取市、新潟市周辺のエリアは、プレート、活断層の活動評価、地震の発生間隔などを総合的に分析した結果、可能性が高いと思われる場所です」
では、いざというときに備えて、今からでもやっておくべき対策はあるのだろうか。
「まず、自宅や職場などの周辺域の災害リスクを把握しておくこと。防災科学技術研究所のウェブサイト『地震ハザードステーション(J-SHIS)』では、その地点に存在する活断層や、揺れやすさなどを確認することができます」
そのほか、家具類を固定しておく、非常用の荷物(食料、飲料水、着替え、タオル、薬、ウエットティッシュ、ライト、乾電池、小型ラジオなど)をリュックサックにまとめておく、といった対策は忘れないようにしたい。
「家族間で避難行動、避難場所を確認しておくことも、いざというときの備えになります」
「女性自身」2021年4月20日号 掲載