09年4月から11月まで抗がん剤治療。12月から翌年1月まで、放射線治療。その後、ホルモン療法も受けたが、並行して、広瀬さんは専門学校に通い続けている。
「週2回の座学、週3回はエアロ、筋トレ、水泳などの実技でした。体調が悪いとき、エアロで目まいがしたので、休憩させてもらおうとしたら、女性講師が厳しい人で『がんだからって、甘えるんじゃない。だったらやめたほうがいい』と。もう、ものすごく悔しくて」
それからは、負けるもんかと気持ちが張って、やりぬけた。
「おかげで運動の力を実感し、自信にもなりました」
日本の資格を取得すると、12年に渡米する。MFLのインストラクターになるためだ。13年、3度目の渡米でMFL試験に合格し、14年にキャンサーフィットネスを開設する。その下準備は、すでに着々と進んでいた。
「がんに罹患したときから、ブログを始めたんですが、そこで乳がんの人の運動教室の参加者を募集したら10人も集まったんですね。しだいに、卵巣がんや胃がんの方も来て、あらゆるがんの人の教室にしたいと思い始めていたんです」
がん患者の会は、全国にあまたあるが、運動することで、がんを克服しようという広瀬さんの理念は、日本では特異なものだ。
「がん患者の会って、暗いんですね。涙を流してつらい話をし、聞く。それで同じ思いを共有できる人には効果があると思いますが、私には向かなかった。それなら明るく、涙を見せず、体を動かすほうが私向きだと思ったんです」
キャンサーフィットネスの利用者は全国で現在200人ほど。リハビリやがん専門医、理学療法士、栄養士の協力を仰ぎながら、さまざまな教室を開いている。心のケアや運動だけでなく、リンパ浮腫や体重超過の人のための対策クラスもあり、なんとチアダンスのクラスまであった。
「16年ごろから始めたんですが、参加者が思いがけず増えたので、チアチームを作ったんですよ」
好きなクラスに参加して、楽しみながら、がんと生きる方法を習得したメンバーの表情は、みんな明るく、生き生きと輝いていた。
「女性自身」2021年5月25日号掲載