ワクチンの“コネ接種”が横行…経験者語った杜撰すぎる実態
画像を見る “コネ接種”が報じられたオービックの野田順弘会長

 

■経験者語る杜撰な管理体制「最後まで本人確認はなく…」

 

冒頭の50代男性・Aさんが目撃したのもそうした現実だった。

 

「申し込みは非常に簡単でひょうしぬけするほどでした。連絡をくれた医療関係者に、まず名前・生年月日・住所を伝え、その数日後に接種希望日を聞かれたのです」

 

1回目の接種は4月中旬。まずは医療関係者が勤めている病院で接種券付き予診票を受け取ったという。

 

「事前に伝えた名前などが印字してあり、《新型コロナワクチンの接種は初めて受けますか》《最近1カ月以内に熱が出たり、病気にかかったりしましたか》といった質問事項にチェックを入れ、署名するぐらいです。その後、接種会場の大病院に向かいました」

 

Aさんは大混雑を予想し、指定された時刻より1時間も早く到着したというが……。

 

「受付には誰も並んでおらず、すぐに予診票を提出できました」

 

厚生労働省のHPにある『医療従事者等への接種について』の項目には《接種を受ける日には、「接種券付き予診票」と「本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証、健康保険証など)」を必ずお持ちになってください》と、記載されている。だが、

 

「氏名や住所を確認されるだろうと予想していたのですが、何もありませんでした。偽名で予診票を作っても大丈夫なのではないかと思ったほどです。接種前に2人の医師が予診票をもとに簡単な確認をしてきましたが、それも一瞬で済みました。注射、副反応がないかどうかの待機時間15分、2回目の日程の確認……、全部で20分もかかっていなかったです。

 

経験して驚いたのは、本人確認が最後までなかったことです。自分で言うのもなんですが、私は医療従事者には見えないと思うのですが……。あの杜撰なチェック態勢であれば、私のように資格のない人間が行っても絶対にバレないでしょう」

 

またワクチン接種に詳しい医師はこう嘆息する。

 

「医療従事者枠を誰に使うかは、病院の裁量に任されており、かなりザルなシステムになっています。接種を申請するために必要なのは『何人希望』ということだけ。後で予診票はコピーして提出しますから、何か問題が生じた場合、調査をすることはできます。しかし大病院ですと職員が数百人、数千人という規模。申請した全員分をチェックすることは現実的に不可能でしょう。

 

そのため、まだ実習中の学生を“医療従事者”として申請しているケースもありますし、職員の家族や知人を枠に入れている病院もあるのです。ある団体の関係者からは、『上層部はみんなコネ接種をやっている』と、聞きました」

 

いまからチェックを厳しくすることで、接種計画が遅れてしまうのも本末転倒だろう。しかし昨年からワクチン接種が決まっていたにもかかわらず、不備だらけのルールにより、“コネを持つ者ばかりが得をしている”現状には暗澹たる気持ちにならざるをえない。

【関連画像】

関連カテゴリー: