■専門家と市民が共にIOCと戦うべき
100万人あたり250人というのは、東京都の人口(1,396万人)からいうと、約3,500人に該当する。
「つまり、五輪が無観客だろうがなかろうが、デルタ株が主流になると、東京の1日の新規感染者数は3,000〜4,000人にまで増える可能性があるんです」
重症化しやすい高齢者のワクチン接種は、ほかの世代よりも比較的進んではいるが……。
「それでも、重症者の数はこれまでの3〜4倍にはなると予想しています」
第3波がピークに達した今年1月20日、東京都の重症者は160人だった。仮に3倍であれば重症者は480人、4倍であれば640人。
「デルタ株による第5波が来れば、重症者数は500人を超えるでしょう。そうなれば、医療崩壊どころか日本社会が崩壊しかねない。残念ながら、中止も延期も入っていない有志の会の提言は、『私たちは警鐘を鳴らしましたよ』というアリバイ作りとしか思えません。五輪の検査体制の脆弱さを、提言書で指摘していないことも問題です、感染拡大を防ぐため、選手村では毎日、選手に“抗原検査”を行うことになっています。しかし、抗原検査はPCR検査に比べて感度が低いので、ウイルス量の少ない感染者は見落とされる可能性がある。選手の中からは『より感度の高いPCR検査をしてほしい』という声が上がっています。本気で、国民や選手のためを思うなら、こうした点を盛り込んだ提言を、五輪開催の決定権を持つIOCにこそするべきです」
「海外メディアは日本に同情的だ」と、上さんは見ている。
「IOCのバッハ会長にいいようにやられてかわいそうだと、多くのメディアがバッハ会長を批判し、五輪の金満体制を改めなければならないと報じています。いま、必要なのは、専門家と市民が一致団結して、直接IOCに訴えること。世界のメディアはそれを報じ、後押ししてくれるはずです」
自分や大切な人たちの命を守るためには、遅すぎるということはないのかもしれない。