■倉持院長《金銀が取れたので、ミヤネ屋さんは無しに》
そのうえで、岩田教授はこう懸念を示す。
《これで危機感を共有とか言われてもできるわけがないので、五輪そのものの直接的効果よりも、「五輪を行うことでメッセージデリバリーの機会を損失した」という間接的効果が大きいのです。このへんは人文系の学者さんのほうがよくご存知だと思いますが。感染症は本当にやっかいで沢山の人が苦しんでいても危機感を共有しづらいです。》
つまり、五輪に放送時間を割くことで、本来あったはずのコロナに対する注意喚起の機会が失われているという。確かに、NHK、民放を問わず、すべての局が五輪報道に力を入れている。特に、金メダルが出た翌日の民放の情報番組は顕著で、多くの時間が金メダリストの人物クローズアップに割かれることになる。実際に、テレビでコロナへの警鐘を鳴らし続けてきたインターパーク倉持呼吸器内科の倉持仁院長は、五輪のために出演予定だった番組がキャンセルになったことを8月4日にツイートしている。
《失礼しました、スケートボードで金銀が取れたので、ミヤネ屋さんは無しになりました。おめでとうございます!》
今までで最悪の感染状況に関わらず、過去の緊急事態宣言時よりもコロナに関する報道は明らかに少なくなった。そのうえで岩田教授はこう警告する。
《地震が東京を襲い、瓦礫の下で9,700人の人が怪我して閉じ込められて病院にいけなくなったら都民は全員驚愕して楽しい気持ちなどゼロになることでしょう。が、9,700人のCOVID患者が自宅で苦しんで治療を受けられなくても誰も気づかないし、楽しく生活を続けられるのです。5月に医療崩壊した大阪や神戸もそんな感じでした。だから、せめてテレビなどではそういうアラートネスを繰り返し出すべきだったのですがtoo late。いや、今からでも。》
五輪関係者は、根拠のない希望的観測を垂れ流すのではなく、岩田教授の警告に耳を傾けるべきではないだろうか。