■自宅勤務が可能なのに出社を命じられたら…
そもそも、「安全配慮義務」とはどういうものだろうか?
「使用者(会社側)は労働者を指揮命令下において働かせるので、労働者の健康などに危害が生じないよう、安全な就労環境を提供する義務があります。かつては、働いていることが原因で労働者が病気になったり怪我をしたり、亡くなってしまったりした場合でも、使用者はなんの責任を負いませんでした。そこで労働契約における付随義務として、判例が積み重ねられ、今では労働者が安全で健康に働けるよう配慮することを使用者に課しているのです」
安全配慮義務とは、労働契約がなかった時代から徐々に労働者が勝ち取ってきた権利。たとえば、職場の「健康診断」や「ストレスチェック」も安全配慮義務から始まっている。最近ではセクハラやパワハラなどの裁判でも、会社側の安全配慮義務違反が認められるケースが増えた。
そこで気になるのが、感染力が強く、最悪の場合は死に至ることがある新型コロナウイルスと安全配慮義務との関係だ。コロナ禍においては、電車で通勤したり、会社などに大勢の人と集ったりすること自体がリスクとなる。
「コロナ禍において安全配慮義務違反とみなされるのは、以下の4つの条件があります。(1)感染拡大が進んでいる状況である(2)会社が何の対策も措置もとらず、漫然と出社を命じている(3)在宅勤務が可能な業務である(4)在宅勤務を行っても会社の業務遂行に影響がない(もしくは小さい)。これらの条件が重なった場合、労働者が会社の命令を拒んでも、それを理由にその労働者に、懲戒処分や解雇など不利益な処分をすることは許されません」
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