■体調を崩し休職 職場復帰できていない保健師も
新型コロナウイルスの流行で保健所の機能低下が浮きぼりになった、と宮崎監督はみる。
「保健所は命や暮らしに直結する重要な役割を担っていますが、全国で削減されています。全国の保健所の数は1992年の852か所から減少を続けて、現在は469か所に減少した。常勤職員も大幅に削減されました。そうしたなかでの新型コロナウイルスの大流行で公衆衛生の脆弱さや保健所機能の低下が明らかになってきたんです」
十分ではない人員のなかで働く保健師ひとりひとりの大変さにも目を向ける。
「全員ではありませんが、みんな終電まで頑張ったりしています。朝は8時半からですからね。帰ったらバタンキューで寝るだけ。朝起きたら顔を洗って出てくる。そういう生活が1年以上続いてる。実際、体調を崩して休職される方は多かった。いまだ職場復帰できていなかったりする。私の知っている人でも何人もいます。
休職するつもりじゃなくて、普通に出勤していて、ある日突然来れなくなって、そのまま長期の休職になったという人もいます。だから、机の周りもそのままの状態。女性保健師の方でした。いつ過労死してもおかしくない状況の中で、壮絶なお仕事をされていました」
そんななか保健師たちはプロ意識をもって頑張っている。「だけど」と宮崎監督は続ける。
「だけど、保健師たちの奮闘を美談にしてはいけない。彼女たちにこんなに負担をかけているのは、保健所の数が少ないとか、人員が足りないとか、緊急対応に対する体制ができてないとか、構造的な問題。でも彼女たちは前向きに頑張っていた。たぶん、そのことが映像から伝わるんじゃないかと思います」
映画のタイトルは、一人の保健師から出た言葉から決めた。
「年が明けてすぐのことでした。『大変な状況ですね』と応援に来た40代の保健師にカメラ向けたら、『私たちはずっと終わりの見えない仕事をやってきたので、そのへんが辛いですね。でも、命にかかわることですから』という返事が返って来た。それを聞いて、まさにそうだなと私も思ってタイトルにしたんです、『終わりの見えない闘い』と」
現在、感染者数は減少しているが、すでに第6波を懸念する声が挙がっている。“終わりの見えない闘い”はいったいいつ終わるのだろうか――。