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ガソリンの全国平均価格が1リットル168.7円と、高値が続いている(’21年11月22日・資源エネルギー庁)。1年前の133円台から3割近い値上がりに、特に車が“生活の足”である地方では、家計に大きな痛手となっている。

 

こうした事態に政府は1リットル170円を超えたら石油元売り会社などに1リットルあたり最大5円の補助金を出し、値下げを要請するようだ。ガソリンのほか重油、軽油、灯油も同様に、12月中〜’22年3月まで期間限定で行うという。この補助金について、経済ジャーナリストの荻原博子が解説してくれたーー。

 

■ガソリンにかかる税金のほうが問題

 

私は、この補助金で効果が出るとは思えません。補助金を受け取った元売り会社が本当に値引きするのか。安く仕入れたガソリンスタンドが店頭価格を下げるのか、わからないからです。

 

それに、ガソリン価格は店ごとに違います。たとえば東京都では1リットル153円から209円まで50円以上もの価格差があります(’21年11月25日・ガソリン価格の比較サイト)。補助金による5円値下げなど店頭価格を見てもわからない。私たちには検証しようがないのです。

 

しかも、補助金が適正に反映されてもわずか5円。1リットル165円でも高値に変わりはありません。

 

さらに政府は、石油の備蓄を市場に放出することも決めました。とはいえ、一時的な供給増で、ガソリン価格を安定的に下げることはできないでしょう。

 

そもそもガソリン代には数々の税金がかかっています。1リットル170円のうちガソリン自体は約98円で、ガソリン税や石油税をのせて約155円。そのうえ消費税で170円になるのです。ガソリン税など税金に消費税をかける「二重課税」も問題ですし、価格のほぼ半分が税金とは、何を買っているのやら。

 

「だったら、税金を下げて」と思いますよね。実は、ガソリン高騰時には課税を一部取りやめる「トリガー条項」があります。平均価格が一定期間160円を超えたとき、ガソリン税の暫定税率分を翌月から廃止し、平均価格が130円を下回ったら、課税に戻す仕組みです。

 

トリガー条項が実施されると1リットル170円のうちガソリン税の暫定税率約25円に消費税を含めた約28円が課税されなくなり、ガソリンは1リットル142円前後になります。これならひと息つけるでしょう。

 

ただトリガー条項は、’11年の東日本大震災後に凍結され、実施には法改正が必要です。政府は「法改正には時間がかかる」として、効果の期待できない補助金政策に踏み切ろうとしているのです。

 

国民の窮状を思うなら、さっさと国会を開き、法整備を急げばいいのです。それをしないのは、ガソリン高騰で国の税収が増えるのに、トリガー条項はそれを吹き飛ばしてしまう。国のふところが第一で、国民の困窮は二の次なのかと、疑念を抱いてしまいます。

 

コロナ禍で疲弊しガソリン高に苦しむ国民の声が、“聞く力”を自負する岸田首相に届くのか。行方を注視したいと思います。

経済ジャーナリスト

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