■経営者のスキルの低さが生産性を下げる
「『生産性を上げる』には、(1)『付加価値』に対して『労働時間×労働者数』の割合を少なくする。(2)同じ『労働時間×労働者数』に対して、『付加価値』を多くする。(3)『付加価値』を多くして『労働時間×労働者数』を少なくする。この3つのパターンしかありません」
近年、「働き方改革」が叫ばれ、労働時間の短縮が図られている。さらに、各企業で早期・希望退職者を募る動きも増えているが……。
「しかし、現実問題として、10時間の労働時間を9時間できたとしても、3時間に減らすことはできません。労働者数もいきなり3分の1には減らせませんよね。生産性を上げるためには『付加価値を上げること』を最優先すべきなのは明白です。しかも、単純に言えば『売上を上げる』ことですから、青天井で伸ばせるチャンスがあるということなんです」
そのために必要なのが、まず経営者の意識改革だ。「日本の経営者のスキルを上げなければならない」と、加谷さんはいう。
「ドイツでは『利益を上げない会社は社会害悪だ』と認識されており、債務超過を放置した経営者には罰則があるくらいです。日本は逆で、大企業が破綻しそうになると国が補填して守ることさえある。諸外国の経営者は、『(経営者への)就任=チャレンジ』ですが、日本の経営者は『就任=ゴール』。日本の多くの上場企業では、経営者は年功序列型で、3、4年後には後輩に地位を禅譲します。そのため、短い任期中、冒険せず問題なく過ごして、無事に退職金をもらおう……という考えになる」
その結果、経営改革の意識もリーダーシップも希薄なのだという。
「経営改革を進めていくと、日本でも欧米でも反発はあるでしょう。しかし、欧米では、反対があっても経営者は改革を推し進めますし、それに乗り遅れる人は『クビにします』といえます。それを受け入れる社員も大変ですが、そのために勉強したり研修したりするので、個々のスキルアップにつながる。一方、日本は終身雇用が強く、経営者も反発する社員をクビにはできませんから、傍若無人になれず、反発されてまで改革を推し進めようしない。ローリスク・ローリターンの経営となる所以です」