コロナで肺炎疑いの乳児が入院できず死亡…遺族が悲惨な医療現場の実態を告発
画像を見る いつもニコニコ、施設の人気者だった大眺さん

 

■検査結果だけ伝えられ診察は一切ナシ

 

静岡市在住で重度知的障がいのある藤澤大眺(だいち)さん(24)は、2月12日にコロナを発症。診察や治療を受けられず、4日後の16日に死亡した。彼の名前からとった「生活介護だいち」という、障がい者の通所事業所を営む弟の雄偉(ゆうい)さん(23)は、こう振り返る。

 

「兄は『アーアー、ウーウー』などという表現でしか気持ちを伝えられませんが、いつもニコニコして穏やかなんです。でも、その日は様子がおかしい。触れると熱いので体温を測ったら40.4度もあって」

 

雄偉さんは救急車を要請し、市立静岡病院に搬送された。PCR検査を受け「30分ほどで結果が出る」と言われ2人で陰圧室で待ったが、1時間たっても誰も来ない。

 

「兄は持参した水を飲み干していたのに、水ももらえなくて。不安から自分の腕をかんだりする自傷行為をし始めていたんです」

 

雄偉さんは「誰か来て!」と2時間ドアをたたき続け、助けを求めた。医師や看護師と目が合ったが、みんな通り過ぎていった。ようやく医師が「陽性」と告げに来たが、診察は一切ナシ。「パルスオキシメーターの値が正常」だからと、解熱剤だけ渡され、帰宅を促された。

 

「パルスオキシメーターは、兄が1秒もたたずに外してしまったから測れていないはず」

 

後日、病院に数値を確認すると、「94%かな、95%かな」と曖昧な回答が返ってきたという。

 

■ずさん対応の元凶は厚労省のガイドライン

 

「だーだん(大眺さんの愛称)、早くよくなるといいね――」

 

自宅に戻って数日間、雄偉さんは、そんな声かけをしながら大眺さんのそばで看病を続けた。

 

「解熱剤を飲んでも39度前後の熱が続いていました。痰が絡んだような咳をして、喉も痛そうで……」

 

容態が急変したのは、発症から4日後の2月16日。

 

「朝食後、横になっている兄の顔を見ていたら急に青ざめていったんです。抱きかかえて、『だーだん!』と呼んでも反応がなくて」

 

その後、救急車で再び搬送された静岡病院で死亡が確認された。

 

「障がい者が重症化しやすいことは、海外では当たり前のこと。最初に救急搬送されたとき、適切な診察と治療を受けられていたら、兄は助かったかもしれません」

 

静岡病院にこの対応について問い合わせると「個別の事案にはお答えできない」と回答。静岡市は、「病院が適切に対処するはず」の一点張りだった。

 

3月30日には、都内でも10歳未満の男児がコロナで死亡。いまだ状況は改善されていないようだ。

 

『倉持仁の「コロナ戦記」』(泉町書房)の著書があるインターパーク倉持呼吸器内科院長の倉持仁さんは、医療放棄の原因を指摘する。

 

「いちばんの問題は、厚労省が酸素飽和度の値や基礎疾患の有無だけで、入院の可否を決めるようなガイドラインを作っていること。現場がそれに甘んじていることも問題です。コロナ診療においても、誰もが医療にアクセスでき、医師が患者を診て総合的に判断する本来の医療体制を構築しなければ、感染が拡大している子どもや弱者に、さらなる犠牲が出てしまう」

 

これ以上犠牲者を増やさないために、早急な検証が望まれる。

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