■受診や入院を控えた人の容体が急変
さらに、オミクロン株の特質によるものか、第6波ではこんな事態も起こっている。
警察庁によると、今年2月に、自宅や高齢者施設など“病院以外で容体が急変するなどして亡くなった人”のうち、オミクロン株に感染していた人が564人いたことがわかった。
この数字も、デルタ株が感染拡大した昨年8月の250人を大幅に上回っている。
「自宅などで亡くなった564人のうち、オミクロン株の感染によることが死因だった人は226人です。オミクロン株は、感染しても軽症や無症状のケースも多く、受診や入院を控える人も多い。しかし、高齢者や基礎疾患のある人は、感染による免疫力の低下や発熱などにより持病が悪化します。容体が急変して、そのまま亡くなるケースが少なくないのです」(全国紙記者)
医療の現場では深刻な状況が続いている。
感染症に詳しい、独立行政法人国立病院機構宇都宮病院の院長・杉山公美弥先生が語る。
「当院は呼吸器の医師が多く在籍しており、呼吸器疾患の患者さんが優先的に運ばれてきますが、第6波においても、コロナ特有の肺炎によって亡くなられているケースがほとんどです。しかも、人工呼吸器やECMO(人工心肺装置)を装着しても、高齢者の場合は救命が困難であることも少なくない。国の基準では、“重症者”に数えられるのは人工呼吸器やICU(集中治療室)に入る人。重症に分類されないで亡くなっている人が今まで以上にいます」
また、感染しても無症状や軽いかぜのような症状の若い世代が、自分が感染していることを知らずに高齢者へウイルスを広げてしまうことも。杉山先生が続ける。
「先週亡くなられた一人暮らしの83歳の女性は、小学校に上がるお孫さんとお祝いの食事を一緒にした際、無症状の孫からオミクロン株に感染し、呼吸困難で運ばれてきました。CT検査では、広範囲にすりガラス陰影があり、すでにコロナ特有の肺炎症状がありました。ご家族のご意向もあり、そのまま息を引き取りました。たしかにオミクロン株は、若い世代にとってはただのかぜかもしれませんが、高齢者にとってはデルタ株以上に警戒しなければいけない感染症だと思っています」
これまでの変異株と異なり、病原性が弱いといわれているオミクロン株だが、そんな私たちの気の緩みが、ウイルスに付け込む隙を与えてしまうのかもしれない。