「北条政子の役は、実はもう決まってるんだ……小池栄子さん」
「なるほど! ピッタリですね」
今年1月から放映中の、北条義時の半生を描く大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の公式キャスト発表より数カ月前のこと。芸能界きっての歴史通として知られるお笑いタレントの松村邦洋さん(54)は、脚本を担当する三谷幸喜(60)から直接打ち明けられたという。
「『松村さんは口が堅いから』と言いながら小池さんの名前を聞かされたとき、すぐに映像が思い浮かんだんです。ちょっと頼りない大泉洋さんの源頼朝が、しっかり者の小池さんの政子の尻に敷かれているシーンが(笑)」
主人公の義時を演じる小栗旬(39)に加え、父・時政に坂東彌十郎(65)、頼朝の弟・義経には菅田将暉(29)など演技派の起用も話題だが、なにより注目は、個性派ぞろいの女優陣。妹役の宮澤エマ(33)や夫の不倫相手の江口のりこ(42)らが、ときにホームドラマを思わせる軽妙な会話で物語をテンポよく盛り上げる。
そんななか、回を重ねるごとに存在感を増しているのが、小池(41)演じる義時の姉である北条政子だ。
世間的には、日野富子、淀殿と並び、日本の「三大悪女」とされる政子だが、女子美術大学付属高等学校・中学教諭で日本史研究家の野村育世さん(61)は語る。
「夫の愛人宅を破壊させ、長男は幽閉、実父は隠居させてしまうなど、江戸時代から今日まで悪女として知られる政子ですが、政治家として己れを貫いた姿は、ほとんど伝わっていません。政子は政子、という生きざまを色眼鏡なしに見てほしい」
ドラマはこれから中盤に差しかかり、長女・大姫の悲劇や頼朝の死などが描かれる。
「頼朝亡きあとに始まる御家人同士のサバイバルは、まさに北野武監督の映画『アウトレイジ』の世界で、“トーナメント戦”のように登場人物が死んでいきます」(松村さん)
そんな乱世のなか、4人のわが子を亡くすという悲運をも乗り越え、幕府を率いていく政子の真の姿は、これまでの悪女のイメージとはかけ離れたものだった。