■年間20万首を見て、自らも歌を作り続け、料理もする。妻はきっと褒めてくれる
「河野が心配していたのは、食事のことです。でも、まったく料理なんてしなかった僕が、いまは、だしを取って味噌汁つくりますし、おひたしも作っているんです」
相変わらず多忙な日々を過ごすなかで、永田さんは昨今、自身の“成長”を実感するのだという。
「やっぱり一皮むけたと思います。脱皮したというかね。それを河野に見ていてほしい、認めてほしいと思うんですよね」
人生100年時代、健康寿命を追求する向きは増すなかで永田さんはもとより「日々是好日」なのだ。
「いまも年間20万首ほどは選歌をしているし、日ごろから、朝4時くらいまで仕事しているからね」
すこし顎を上げるように言った。歌を作り始めて軌道に乗れば、発想が発想をどんどん呼ぶという。
「先日は、締切りと出張が重なってどうしようもなく、東京行きの『のぞみ』の2時間15分のなかで30首あまり作りました。『時速15首』と自分では言っているんです」
前出の新著を原作とするNHKドラマ(柄本佑、藤野涼子主演)も放送日が6月6日に決まった。75歳にして人生の繁忙期を過ごす夫を、天国の妻はどんな思いで見ているのだろうか……。
「フルに働いているもんな。褒められるしかないだろうね……『あなた、よくやっているわね』と」
今宵もワイングラスを片手に、永田さんと裕子さんの語らいが、詠まれることだろう。
《呑まうかと言へば応ふる人がゐて二人だけとふ時間があつた》
愛妻に捧げた挽歌である。
(取材・文:鈴木利宗)
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