■“子供は親の持ち物”という考えが日本に及ぼす悪影響
こども家庭庁は’23年4月に創設される見通し。子供をめぐる問題に対して、縦割り行政に阻まれることなく、一体的に取り組む組織とされている。虐待やいじめの対策、ヤングケアラー支援などを例に挙げているが、具体的な政策の内容や安定した財源を確保する手段は明らかになっていない。
そんななか、こども家庭庁という名前も物議を醸している。もともとは“こども庁”という呼び方だったものの、岸田政権になってから自民党内の議論で「子どもの基盤は家庭」との声が相次いだため“家庭”の2文字を付け加えることになったのだ。
野田聖子子ども政策担当大臣(61)は’21年12月の会見で、「そもそも名称は仮置きだった」と述べた。しかし「“子供のことは家庭で”という考えが広がるのでは。大変懸念しています」と泉市長は苦言を呈す。
「日本は世界でも類を見ない価値観の国で、“子供は親の持ち物”という考えが非常に強い。親に責任があり、権限もある。言ってしまうと、“生かすも殺すも親の自由”なんです。その責任感が、結果的に親を苦しめる一つの原因にもなっています。しかも、“子供は親の持ち物”という考えがあるから、国は子供にお金を使おうとしない。大問題です」
5月10日、岸田文雄首相(64)は政府の教育未来創造会議で「現在、世帯年収約380万円以下の学生を対象に実施されている授業料の減免、給付型奨学金支給といった制度を拡充する」と提言。続けて、「約380万円を超える中間所得層についても、子が3人以上の世帯と理工系や農学系の学生に対して支援する」と述べた。
泉市長は「条件をやたらつけて、『大変貧しい人にしか手を貸しません。他は親がやってくださいよ』と。『それほどしたくないわけ?』って思いますよ。国民のことを考えていたら、これほど冷たい政治はしないと思います」といい、呆れ顔を見せる。
「政府の施策の大半は『子供を産むな』というマイナスのメッセージに繋がっています。『産んだら自分で責任取れよ』という国で、産めるわけがありません。逆に『産んでくれてありがとう。みんなで応援するよ』と言うことが大事。メッセージ性のマイナスからプラスへの転換も課題です」
さらに泉市長は、OECD(ヨーロッパ諸国を中心に日本やアメリカなど38ヵ国の先進国が加盟する国際的な経済協力開発機構)を例に挙げる。
「OECD諸国の中で、日本は公共事業費が平均の倍。にも関わらず、子供予算は平均の半分です。私が大学生だった40年以上前から、ずっとそうなんです。公共事業で経済を回してきたけれど、もはや経済成長はしていない。なぜかというと、そういう時代ではないから。それなのに、ずっと同じままなんです。
他の国と同じように公共事業を半分に抑えることがまず必要。それにプラスして、子供予算を2倍どころか3倍にしないとダメです。それほど日本は少子高齢化の面で、危機的な状況にあります」