ケーキは私の“声”不安症で話せない14歳人気パティシエの挑戦
画像を見る 厨房に立つみいちゃん

 

■コロナ禍でも、安心してお菓子を届けたい。生ケーキの自動販売はみいちゃんの発案だ

 

「じゃ、がんばる」

 

昨年9月、東京パラリンピックの聖火ランナーに選ばれた、みいちゃんと一樹さん。最初は嫌がっていたが、最後は「オレたち2人ならだいじょうぶや」という兄の言葉で納得し、みごと大役を果たした。

 

また、今年4月の発達障害啓発週間には、みいちゃんの作った斬新なブルーのケーキが話題に。千里さんは、

 

「青い色には驚きましたが、みずきは自閉症啓発のシンボルカラーなので採用したようです。完成すると、多くの人から『青い色して、あんなにおいしそうなケーキは見たことない』との声が。何より、最初に見た私が感動しましたから。またまた親ばかですね(笑)」

 

およそ1年後の春には、みいちゃんの中学卒業とともに、工房のグランドオープンが控える。

 

「とはいえ、一人の自立した大人として、ケーキ職人の道を行くスタートというだけで、開店日のペースなども変わらないかもしれません。もちろん、目標としていた黒字化も計画を変更して、今はまったく考えていません」

 

千里さんは、むしろ同じ病気があったり、夢に踏み出すことをためらっている人のためにチャレンジを続けたいと話す。

 

その一つが、この5月16日に始まったばかりの自動販売機による生ケーキの販売だ。

 

「もともと自販機は、コロナ禍でのお客さまの利便性と、対面販売が苦手なみずきのことを思っての設置でした。最初は焼き菓子で始めましたが、この春、みずき自身が、『生ケーキも届けたい』と言いだしたんです」

 

千里さんによれば、初日は12個のうち8個が売れたという。まずまずの滑り出しだろう。母と娘の二人三脚のケーキ作り、そして夢へのチャレンジは続く。

 

「いつか、パリに行きたいです。場面緘黙症の治療には、大胆に環境を変えることもいいとお医者さんにも言われていて、実はコロナ前にも計画していました。でも治療目的ではなく、あくまで家族旅行。みずきも私たちも、やっぱり一度はパティシエの本場を体験してみたいですから」

 

パリの華やかなショーケースに接したあと、みいちゃんの工房から生み出されるお菓子には、どんなメッセージが込められるだろう。

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