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「こども食堂」は低額や無料で食事を提供する場所。“こども”と名乗っていますが、対象は子どもに限らずさまざまな世代が利用でき、さまざまな世代がボランティアとして参加する地域交流の場です。そんな、こども食堂が増えているといいます。経済ジャーナリストの荻原博子さんが解説してくれましたーー。

 

■日本の教育予算は万年最低水準

 

こども食堂の発端は’12年東京都大田区。近所に「給食以外はバナナ1本」という子がいると聞いた女性が始めました。NPO法人の全国こども食堂支援センター・むすびえによると、活動は広まり、’21年12月には6000カ所を超えています。

 

こども食堂は、子どもの貧困対策だけでなく、町おこしや居場所づくりなどの役割も担っています。こうした活動を多くの方が支えているのを見ると、日本も捨てたものではないと心強く思います。

 

しかし、子どもの貧困率は13.5%で7人に1人。母子家庭など大人1人で子どもを育てる世帯では、約48%で2人に1人です(’20年・厚生労働省)。

 

また、18歳未満で家族の介護や世話をするヤングケアラーも問題です。小学6年生の実態調査で「世話をする家族がいる」と答えたのは6.5%、15人に1人にのぼります(’22年4月・厚生労働省)。

 

安心して学び遊べない子どもが増えているのは、日本という国の貧困化が影響していると思います。

 

世界と比較するために「ビッグマック指数」を見てみましょう。マクドナルドのビッグマックは世界中どこでもほぼ同じ商品ですが、国によって値段が違います。

 

たとえば’22年1月、日本は390円で、アメリカでは5.81ドル、日本円に換算すると668円でした。日本はアメリカより4割以上安く、世界のランキングでは57カ国中33位。「安いからラッキー」ではなく、日本の購買力がそれだけ低いことを示しています。

 

またOECD(経済協力開発機構)が発表する「平均年収ランキング(’20年)」でも日本は22位。’97年から年収は0.3%しか上昇せず、ランキングも14位から大きく後退。その間に年収の上がったスウェーデンやニュージーランド、韓国に抜かれてしまいました。

 

いっぽう国は、’23年4月から子ども政策の司令塔として「こども家庭庁」を発足させます。当初「子どもを社会で育てる」意図を盛り込み「こども庁」とする予定でしたが、’21年12月岸田内閣は「こども家庭庁」に変更しました。子どもは家庭で育てるのが基本と家庭の責任を重くし、家庭に恵まれない子を見捨てるのでしょうか。

 

日本のGDPに対する教育予算は、OECD加盟国では万年最低水準です。しかし、国はこの状況を変えるつもりはないのでしょう。子どもにお金をかけない国で「子どもを産まない」と考える人が増えても不思議ではありません。

 

国は’23年度から「出産一時金」の増額を検討していますが、応急措置にすぎません。給料が上がらず国が貧困化する現状を、もっと重く受け止めてほしいものです。

 

【PROFILE】

荻原博子

身近な視点からお金について解説してくれる経済ジャーナリスト。著書に『「コツコツ投資」が貯金を食いつぶす』(大和書房)、『50代で決める!最強の「お金」戦略』(NHK出版)などがある

経済ジャーナリスト

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