「急激な円安が、止まりません。政府と日銀は24年ぶりの為替介入に踏み切りましたが“焼け石に水”で、144円程度(10月5日現在)に戻ってしまいました」
こう話すのは、最新刊に『スタグフレーション-生活を直撃する経済危機』(祥伝社新書)がある経済評論家の加谷珪一さん。
外国為替市場で一時1ドル146円台にまで迫っていた円相場が、財務省と日本銀行の為替介入で9月22日には140円台まで上昇した。
「政府が保有するドル資金を使い、円を買い、ドルを売る『為替介入』を行いました。’98年以来24年ぶりのことで、2.8兆円規模の介入だったとみられています」(加谷さん・以下同)
しかし円は、すぐまた145円近くまで下落してしまったのだ。
国がすぐに使えるドル預金は約20兆円で、これが為替介入できる当面の上限となっている。
「計算上あと5回介入できますが、使い切れば、打つ手がなくなってしまいます。よって再び円安が進めば2度目、3度目の介入をするでしょうが“対症療法”にすぎず、来春に1ドル160円まで下がってもおかしくないんです」
なぜ「円安」の流れが変わらないのかといえば、「日米の金融政策の違い」だという。
「世界的なインフレで、欧米諸国は金融緩和をやめて金融引締めに踏み切りました。しかし日本は、黒田東彦日銀総裁が『当面、金利を引き上げることはない』と表明しているんです」
すると、黒田総裁の任期満了の’23年4月までは、アベノミクスを継承する金融緩和策が続き、円もしばらく下がり続けることに。
私たちが最も気になるのは、これもとどまるところを知らない「商品値上げ」との関連だが……。
「前述のとおり、世界的な物価高騰のなか、日本では景気低迷が続く『スタグフレーション』状態です。この『給与が上がらないのに物価が高騰する』状況を、円安はさらに悪化させてしまうんです」
家計に深刻な打撃となる値上げ。
「現在の円安が物価に反映してくるのは、およそ半年後からと考えると、’23年春以降も『値上げ』傾向は続くとみるべきです」
そこで、加谷さんに「1ドル160円時代」を生き抜くための「家計防衛術」を解説してもらった。
【1】消費行動を変える
「節約法には、〈a〉より安い商品を探す、〈b〉代わりになる商品を探す、〈c〉買うのを我慢する、の3通りあります。しかしインフレで給与も上がらない状況では、〈a〉と〈b〉も、いずれ価格が上がりますので、選択肢は〈c〉しかなくなります」
その場合、なにを「買うのを我慢する」かが分かれ道となる。
「まず『高額商品を買うのを我慢すること』。単価が安い食料品も、車や家など100万~数千万円の高いものも、軒並み値上がりします。そんななか、食べるものをケチると心の健康にもよくありませんので、大型出費となる車や持ち家について考え直しましょう」
「本体の価格に加え、ガソリン代など維持費が高騰しているので、原則として車は手放すべきです」
インフレになると不動産価格が上がるというイメージがあるが、現実は二極化が進んでいる。「土地は広いけれど郊外で、駅までバス利用」などの物件は、「将来的に資産価値が下がり続ける可能性が高い」という。
【2】保険の統合・解約
「旦那さんが、会社に来る保険の営業に言われるがまま、月数千円で入った保険が『何件も継続したままだった』例は意外と多い。1つに統合できます。高額の生命保険に入って、毎月、高い保険料を払い続けても、急に旦那さんが亡くなる確率はものすごく低いのが現実です」
がん保険など医療保険も同様で、日本は国民皆保険制度があり、がんの治療費も高額療養費制度を使うことができれば、一定以上支払ったお金は還付される。
「よって貯金が少なくとも200万円あれば、がんになっても出費の心配は少ない。貯金が100万円しかなければ、保険より、あと100万円の貯金を優先すべきです」