根っからの話し好きで1日30人もの利用者と会話する細井さん(撮影:田山達之) 画像を見る

【前編】91歳、現役介護看護師 74年間さすり続けた掌のぬくもりより続く

 

ここは、京都府木津川市の山あいにある「山城ぬくもりの里」。特別養護老人ホームやケアハウスも併設する総合福祉施設だ。

 

デイサービスの談話室での光景は、一見、どこにでもある介護の現場のようだが、ほかの施設と大きく違うのは、介護職で同施設の顧問も務める細井恵美子さんさんが91歳で、利用者たちが80代や70代など、介護者より年下ということだ。

 

「今日の5人の方たちは、全員が認知症を患っていらっしゃいます。私は17歳で看護師になって74年になりますが、看護や介護の現場でずっと大切にしてきたのは会話。それは、認知症の方を相手にしたときも同じです。

 

私、病棟勤務のころから、ナースステーションにいるより現場が好きな、おしゃべりな婦長さんで有名やったんです(笑)。

 

この年やし、こんな小さな体ですから、体力では若いスタッフにかないませんが、会話なら年寄りの私でも自由にできるでしょう」

 

なるほど、細井さんが利用者と目の高さが同じになるまで腰をかがめ、まずは「○○さん」と呼びかけると、それまで無表情だった相手も自然に笑顔になるのだった。

 

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