01年7月の明石市花火大会での事故(写真:時事通信) 画像を見る

韓国・梨泰院での群衆雪崩事故。世界的ヒットを記録したドラマ『梨泰院クラス』では、ここを舞台にしたハロウィンのシーンがあった。いわば、多くの若者にとっての「聖地」でもあるここで起きた凄惨な事故。どうにか身を守る術はあるだろうかーー。

 

韓国の梨泰院で10月29日に起きた群衆事故は、日本人2人を含む156人の命を奪った。関西大学で群集安全学が専門の川口寿裕教授は「通常では考えられない密集状態で群衆雪崩が起きた」という。

 

川口教授いわく、一般に人は肩幅が約50センチで胸の厚みが約20センチ。1平方メートルの正方形に、隣同士に2人、前後に5人の計10人が並ぶと、前後左右が密着した状態で限界だという。

 

だが事故付近には1平方メートルに15~16人いたとされ、自力で立っているのでなく、前後左右がもたれ合い浮いているような状態と考えられる。事故の映像で、群衆が揺れているのがその証拠だそう。

 

そんな密集状態で誰かがつまずいたりしゃがんだりすると、つっかえ棒がはずれたように前後左右の人が一斉に倒れ、雪崩は同心円状に広がっていく。何重にも人が重なり、下敷きになった人は想像を絶する圧力で押され亡くなった。

 

さらに、立ったまま圧死した人もいたと報じられている。

 

「強く圧迫され、胸を膨らますことができずに窒息するのが圧死です。立ったまま圧死するなんて、尋常ではない密集状態だと思います」(川口教授)

 

特に女性は、背が低く密集に埋もれ、全身で圧力を受けた人が多い。被害者の3分の2が女性だったのはそのためだろう。

 

あまりの凄惨さに心が痛むが、これから年末年始に向かい、日本でもカウントダウンや初詣でなど密集が起こる機会が多い。同じような事故は起きないのだろうか。

 

「ないとは言い切れませんが、日本では場内を一方通行にして人々を誘導し、狭い路地は通行禁止にするなど、そのつど、警備態勢をつくります。最近は、警備員の確保や警備予算が厳しいために中止するイベントもあるほどです。警備が徹底された日本では、あれほどひどい事故は考えづらいでしょう」(川口教授)

 

しかし、大地震などの災害が起きたときは危ないという。

 

「災害発生当初は、警察や消防なども救助に人員を割くため警備は手薄です。それぞれ個人の判断で、密集状態をつくらないよう行動することが大切です」(川口教授)

 

出先で災害にあうと多くの人が駅に向かう。電車は動かないことが多く、駅周辺は人があふれどんどん密集する。情報が明らかになるまで、川口教授は「動かないのが賢明」だという。

 

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