■夫婦を変える必要はない。この組み合わせこそ正解だった、と笑いが絶えない深見さん一家
「お待たせしました『そばとん』2人前、『かけエビフライ』を2人前ですね」
ここは深見家から車で15分ほどの国道沿いにあるファミリーレストラン。ここでも示し合わせたわけではないのだが、兄弟・姉妹に同じメニューが運ばれてくる。
「やはりシンクロですね」
カメラマンが声を掛け、レンズを向けると、4人そろってほほ笑む。
実にシンメトリーなのだが、それにしてもこのボリューム!
「われわれは麺が好きで、どうしても大盛りを頼んでしまうなぁ」
兄弟は、2人前あるメニューをこれまたほぼ同じ速さで平らげてしまう。
帰宅するや、
「運動しなきゃね」
と誰かが言い、着替える。言うまでもなく兄弟・姉妹おそろいのウエアで颯爽と登場してくれた。
寒波が近づく直前の日曜日。暖かな強い日差しが反射し川面がキラキラ輝くなか堤防沿いの道を4人は並んで歩く。通り過ぎる人たちがほぼ確実に驚いて振り返る。そんな表情には4人は慣れっこだ。
「ここから庄内緑地公園あたりまで普通に歩いていっちゃうこともあるの。いつの間にか着いてる」
喜久子さんがこともなげに言うが、地図を見ると5kmほど先だ。
「誰かが必ずしゃべっているから話題が途切れることがないの」と柔らかな笑顔を見せる忠義さん。
さきほど取ったカロリーを寝るまでに消費しようとばかりに、夜半、入浴前には夫婦ペアのダブルスで卓球が繰り広げられた。
かつての子供部屋がいまは卓球ルームとなっている。本格的な卓球台が設置され、忠義さん・美智子さんと孝晴さん・喜久子さんがペアになり、軽快なラリー音が響いている。
ふと思いついて、「ダブルスのペアを変えようと思ったことはないのですか」と問うてみる。喜久子さんが答える。
「みっちゃんは左利き。あとの3人は右利きだから、腕がぶつかっちゃうのね。でもたーちゃん(忠義)は、みっちゃんとぶつからないようにうまくカバーして打ってるから、やはりこのペア同士なのよ」
「必要に迫られて組んだ」(忠義さん)ペア=夫婦ではあったが、この笑いの絶えなさ。結果として、この組み合わせが正解だったという証しに違いない。