■舞台に立ちラップしていると体の痛みが消えてる。骨を痛めてもコルセットしてステージに上がった
初ライブから1年後には、ファーストCD『異策〜傑作の自作〜』をリリース。デビュー曲となる『天国と地獄』には、関西ラップ界の大物も制作陣に名を連ね、話題を呼んだ。
〈♪68年 人生経験 御迎えまだまだ 全然けえへん……辛いとき悲しさわかる 今この歳でラップができる〉
この曲では、MV(ミュージックビデオ)も制作された。
「今は、自分で作ったMVをユーチューブなどに上げて、すぐに見てもらえるでしょう。すごい時代になったもんや。
デビューした当初は、やっぱり祖母と孫というんが珍しかったんやろうね。出演依頼や取材も押し寄せたんですわ」
順風満帆に見えた滑り出しだったが、意外な落とし穴が待っていた。玄武が語る。
「コロナです。初CDが’19年5月でしたから、半年ほどして、ようやく名前が浸透してきたと思ったら、年明けからコロナ禍に。
イベントやバトルの主催者の方も、でこ八は、間違いなく高齢者なので、出演依頼するのを躊躇しているのがわかりました」
しかし、コロナ禍の間も、でこ八はリリックを書き続け、玄武はソロとしての活動もスタートするなど、「できることを続けた」2人だった。そして今年の年明けあたりから、また出演依頼が来るようになったという。
冒頭の梅南座へのゲスト出演など、再び慌ただしい毎日を送るなかで、でこ八はあることに気づく。
「舞台に立ちラップをしてると、体の痛みが消えてる。ノリよく跳びはねる曲も多いし、リリックを頭に入れるのに必死で、痛がってるヒマもないのがホンネ(笑)。
こないだも、家で洗濯機を移動させていてポキッと背中の骨を痛めたけど、コルセットしてステージに上がりました。
主治医の先生も、『ストレス発散で症状が抑えられているのでしょうね』と驚いてはる」
あるバトルで、でこ八は、自分がラップを続ける真意を、こんな言葉で伝えた。
〈♪わたしが、なんで年寄りになって、こんなことしてるか知ってるか。(腰や肩をさすりながら)あっち痛い、こっち痛い、言うババアになりたなかったからや。ただそれだけや、負けへんぞ!〉