■店を始めてから4年間、誰一人大病知らず。腹にためず、好き勝手に言い合っているから
気づけば、ランチの時間帯も終わり、すでに午後1時半過ぎ。
「さあ、手の空いた人から、まかないにしようか」
キョウコさんの言葉を合図に、控室の長テーブルに、海水ねぎとワカメのヌタなどの昼食が並んだ。ご飯は、食べやすいおにぎりになっていた。まかない担当のタカコさんとトキさんがピザを作りながら準備していたものだ。
ようやく腰掛けることができて、ホッとひと息つく様子。よく考えれば、朝の8時から約6時間も立ちっぱなしだったことになるが、
「私は、ピザ屋の前は25年間、介護職に就いてました。肉体的にもしんどい職場でもありました。でも今、こうやって元気に働けるのは、その介護の現場で培った体力と経験があるから。だから、人生、頑張って続ければ、いつか必ず何かの役に立つんですね。
最近は、いい仲間に出会えて、この町にお嫁に来てよかったと、つくづく思うんです」
とミエコさんが言えば、ヤスエさんも、
「ここは全員がおばあさんとはいっても、73歳で最年少の私と、80代半ばのトキさんやキョウコさんとは、ひと回りも年が離れてます。その大先輩の姿を見ていて、健康に明るく生きる秘訣を学んでます。
大切なのは、自立していることと食生活。ここは、このとおりまかないも野菜中心で、手作りしたものをみんなでいただく。これ以上の健康法はないでしょう」
孫3人、ひ孫7人という最高齢86歳のトキさんは、今も“二足のわらじ”で働き続けている。
「週末をここで働いて、その間の平日の2日間、地元の病院でお掃除のアルバイト。その病院では、38歳の孫が受付をしてるんですよ。
健康法? 特にないわ(笑)。ただ、子供のころから九十九里の浜で潮水をたっぷり浴びながら遊んだことで鍛えられたのかね。
みんな、私が元気だって言うけど、よくよく考えたら、この店を始めてからの4年間、誰一人として大病して休んでいない。だって、このピザ屋には病気のもとといわれるストレスがないもの。やっぱり、腹にためずに、好き勝手に言いたいことを言い合ってるのがいいんだわ」