国内のみならず、海外でも反対や戸惑いの声が広がっているALPS処理水の海洋放出。実行する根拠の一つとされてきた“経済的”という前提が崩れつつある。
現在も毎日約100トンもの放射性物質を含む“水”が発生している福島第一原発。政府や東電は、多核種除去設備 (ALPS)によって、この“水”から“トリチウム”以外の放射性物質を除去した水を「ALPS処理水」と呼び、約134万トンもタンクに保管。今夏中に福島沖への放出を目指している。
「当初、海洋放出に関する諸費用は、34億円とほか4つの処分方法に比べて最も安価で、かつ放出にかかる期間も約7年と短いと言われていました。しかしフタを開けてみれば、当初試算より費用は10倍以上に。放出終了までの期間も、30年に延びています」
そう指摘するのは、福島在住のジャーナリストで原発問題に詳しい牧内昇平さんだ。
「政府は2013年末から有識者委員会を開いて、トリチウムを含む処理水の処分方法を検討してきました。前述の34億円は、資源エネルギー庁が2016年にまとめた委員会の報告書に記されています。
あくまでも試算だとか、風評被害対策は別途必要などのただし書きはあるものの、海洋放出のメリットを強調した内容で、世論誘導の意図が見えたものでした」
関連カテゴリー: