「衝突までの猶予は20数秒」【羽田炎上事故】複数パイロットが証言“JAL機はなぜ海保機に気づかなかったのか”
画像を見る JAL機のパイロットは滑走路上の海保機を「視認できなかった」と話している(写真:時事通信)

 

では、今回の事故で「衝突20数秒前の段階で海保機に気づいた」場合、JAL機はゴーアラウンドできたのだろうか?

 

「もしも衝突20数秒前の段階で滑走路上のライトに気づき、それが航空機のものであると認識できていれば、ゴーアラウンドは可能だったと思います」

 

そして現役パイロットは、「日中の天気がいい状態であれば、滑走路上の物体に気づきやすい」と話しつつも「今回のように夜間の場合は、気づくのはかなり難しいと思います」と話す。

 

一方「たとえ管制から『着陸OK』が出たとしても、パイロットは自分の目で滑走路上の最終確認をしなければいけない」と語るのは、元パイロットだ。

 

「着陸する滑走路に異常がないかの最終点検(=ラストクリアチャンス)は必須であり、パイロット自らの目視によって、滑走路上の侵入機に用心しなければいけません。

 

特に超過密で、管制ミスが発生するような要注意空港では、管制官の許可だけでなく、自らの目で確認が必要なのです」

 

やはり、半年に一度の訓練や審査では、夜間を想定して、滑走路内の侵入物への瞬時の対処が試されるという。

 

「夜間を想定したシミュレーターチェックでは、『着陸許可』が出た後に、突然、滑走路内に工事車両が侵入するなどの動きに対して、パイロット、あるいは被試験者は瞬時に対応して『ゴーアラウンド(=着陸を中断して上昇)』します」

 

ただし、訓練や審査の場合には、「この試験官は(トリックを)やりそうだな」などと、ある程度、予測して構えることができるそうで、「実際のフライトでは、夜間は非常に見えにくい状況にあるとは言えます」と元パイロット。

 

今回の事故のような、夜間で「見えにくい」状況でも侵入機を確実に視認するために、機が点灯させているライトを確認するのだという。

 

「夜間には、機体は必ず左翼端の赤色、右翼端の青色、および尾灯の白色を点灯させています。しかし、これらはタッチダウンゾーンライトの高輝度に紛れてしまって見えにくいことがある。

 

ですから最も頼りになるのは、機の胴体の上下に設置された赤色回転灯であるビーコンライト、あるいは両翼端の白色の閃光灯であるストロボライトです。これは着陸するコクピットから認知できるはずです」

 

ストロボライトは通常、滑走路内に進入する際「衝突防止」のために点灯するものだが、「今回の事故時に海保機のストロボライトが点灯していたかどうかは不明です」と元パイロット。

 

しかしそれでも「夜は滑走路が暗くて見えないから、海保機を視認できなかったのではないか」と結論するのは「極端です」と元パイロットはハッキリ言う。

 

「視認できなかった理由を『暗くて見えなかったから』とするのは言いすぎです。もちろん、『発見しにくかっただろう』とは思います。

 

しかし、パイロットの視力、もしくは夜間視力によっても、発見タイミングの差が出てくると思います」

 

すると、今回、JAL機が「視認できなかった」(JAL機パイロット証言、1月4日、ANN NEWS)のは、なぜなのだろうか?

 

「『なんでだろう?』と私も思います。たしかに夜間は、滑走路周辺のライトに溶け込んでしまって、発見できないことがあるかもしれない。しかし赤色回転灯であるビーコンライト、白色閃光灯であるストロボライトで多くのパイロットは気づけると思います。そして気づいたのであれば、パイロットの誰もがゴーアラウンドしたはず。

 

しかし、JAL機のパイロット3人とも『視認できなかった』というのであれば、『危険を感知していなかった状況』となってしまいます」

 

このように、自身の体験に基づく貴重な証言をしてくれたパイロット2人(現役、OB)の洞察をもってしても、事故当時のJAL機のコクピットがどのような状態であったかを完全に把握するまでは難しいようだ。

 

元パイロットは「海保機のライトが正常に点灯していたのであれば、JAL機のパイロットが海保機のビーコンライト、ストロボライトに気づいたか否かが、事故原因の究明の重要なポイントになると思います」と話す。

 

その「事故原因の究明」に不可欠なボイスレコーダーに関しては、乗員5人が亡くなった海保機からは事故翌日の1月3日に見つかっていた。

 

しかし1人の犠牲者も出さなかったJAL機からボイスレコーダーが回収されるまでには、その後3日間を要している。

 

運輸安全委員会などによる「正確な記録の保存・調査・分析」の報告が待たれる。

出典元:

WEB女性自身

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