「すごくいいと思う!」がんでわが子を失った母たちが出会い“理想のこどもホスピス”作りが始まった
画像を見る 最初期のメンバー山内こずえさんと。「千尋ちゃんは野心とかまったく微塵なく。ほわんとした人です」(撮影:高野広美)

 

■「皆が気軽に利用できる施設を」

 

「何も持っていない私たちでしたがあれから2年、ミラクルなことが次々と起こっているんです」

 

そう笑う千尋さん。夕青くんの4歳の誕生日にあたる2021年3月19日にプロジェクトを発足。自身が体験したドイツのホスピスの「患者さんを家族ごと友人のように支える」ケアを理想に活動を始めたが、当初は「メンバーが集まるかが心配だった」という。

 

しかし、手始めにフェイスブックとインスタグラムを開始したところ、初日に1通のメールが舞い込んだ。

 

福井県における小児がんの拠点病院である福井大学医学部附属病院小児科の看護師・広瀬知美さんからの「以前からこどもホスピスの重要性を考えていました」という活動への参加表明メッセージだった。実はこの広瀬さんは山内さんの長男の担当看護師だった。山内さんはこう語る。

 

「病棟で神ナースと慕われ福井の小児がん患者の家族であれば、もう知らない人がいないくらいすごい方です」

 

さらに子供が在宅医療を受けていた経験を持つ吉岡ちづるさんら心強いメンバーが続々と参加。

 

メンバーでアイデアを出し合い始めたのは、病児の親に温かいお弁当を差し入れるサービス。千尋さんが生き生きとした声で活動の内容を教えてくれた。

 

「親は食べることなど忘れて付き添い、心身を壊してしまうこともあるので、福井大学病院と提携して定期的にお届けしています」

 

さらに病児たちも無理なく参加できる「タイムを競わないマラソン大会」や、プロを招いた音楽会など、闘病中心になりがちな病児と家族を招待し「その日その瞬間を謳歌してもらいたい」という願いを込めた催しを展開している。

 

「いまは全員がボランティアで参加してくれていて。手先が器用な人、料理が得意な人、それぞれの得意分野があってバランスよく会が成り立っています」

 

申請が認められ、千尋さんたちの団体「ふくいこどもホスピス」はこの4月からNPO法人となる。

 

「大きな目標である施設の建設には莫大な費用がかかります。個人や法人から寄付金が寄せられることも増え、2026年には寄付金控除が受けられる認定NPO法人になることを目指しています。

 

がんのお子さんや家族だけの場所ではなく、カフェなどを併設して、皆が気軽に利用できる施設にできたら。ホスピスの『怖いイメージ』を払拭したいのです」

 

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