JR東日本は5月9日、「JRE BANK」を開始します。JRE BANKは楽天銀行と提携し、入出金や振り込み、定期預金などを行うネット銀行です。口座開設などはネットやアプリで行い、紙の通帳は発行しません。
「鉄道会社がなぜ銀行を?」と思うかもしれませんが、近年、異業種から金融業への参入が増えています。イオン銀行やセブン銀行などはもうおなじみですが、2023年には第一生命や日本航空、ヤマダ電機なども参入しました。
各社が持つクレジットカードやポイントの事業と銀行サービスを合わせて自社の経済圏を構築し、利益の上昇を目指すもの。ものが売れない時代の企業戦略でしょう。
JRE BANKは、3つの特典が注目されています。
【1】JRE BANK優待割引券
口座の残高が50万円以上で、グループ会社のクレジットカードであるビューカード利用額の引き落としがあれば1枚、給与や年金の受け取りがあれば2枚など、4割引券がもらえます。支給枚数を決める時期は年2回あり最大年10枚。JR東日本管内なら新幹線も利用できるのはうれしいですね。
■空席を残すより割り引いてでも客が増えたほうが儲かる
【2】「どこかにビューーン!」2千ポイント割引クーポン
「どこかにビューーン!」とは、ランダムな4つの候補地から1カ所を選択。新幹線の往復チケットを、JREポイントで購入できるサービスです。東京・上野・大宮からの出発なら往復6千ポイントともともと破格ですが、残高50万円以上とクレカの引き落としなどで通常から2千ポイントを割り引きます。支給枚数の決定時期は年4回で最大年12枚の割引クーポンがもらえます。
【3】モバイルSuica限定のSuicaグリーン券
東海道線など普通列車のグリーン券が、残高50万円以上で1枚もらえます。決定時期は年4回あり、最大年4枚です。
これでもかとお得を詰め込んだのは、新規口座を獲得するため。しかも、残高50万円以上や給与や年金の受取り口座に指定する方を優遇して“上客”を獲得したいのでしょう。給料や年金など振り込みのある方は、銀行が振込手数料を定期的に稼げる上客なのです。
しかも特典は自社のサービスです。JR東日本としては、空席を残すより割り引いてでも利用客が増えたほうが儲かりますし、「割引があるなら行こう」という潜在客の掘り起こしにもなる。損のないうまい戦略といえるでしょう。
口座の開設を考える方は、「なんとなくお得そう」ではなく、特典を何度利用しいくら割引になるかなど、具体的にお得額を試算して検討するといいでしょう。
ただ給与などの振込み先変更はよく考えて。光熱費などほかの引き落としも変更できるか、確認を。
今後は、新しい銀行や新しい支払い方法など、選択肢がどんどん増えるでしょう。宣伝に惑わされず、自分に合った方法を見極める選択眼を鍛えていきたいものです。