「向こう三軒両隣」は私が守る!マンモス団地の女性自治会長の奮闘
画像を見る 「はい、大山自治会の佐藤です」と相談電話に応える。24時間受け付けること自体が住民の安心感につながると信じる(撮影:五十川満)

 

■会長のバトンは渡しても生活に変わりはない。住民からの電話も24時間対応のまま

 

「『24時間、住民からの電話を受けたり大変ですね』とよく言われますが、私は『ぜんぜん』と答えます。 苦労と感じないのは、私が自治会でやってきたことは、すべて恩返しだから。

 

団地で何か問題が出てくるたびに、ここで暮らし始めたときに私たち家族が周囲の人たちに助けられたことを思い出し、またみんなで力を合わせて乗り越えようと、知恵を絞ってきました」

 

そう語る佐藤さんが、会長職を退き相談役となったのは2015年春。

 

「会長を10年やって、住民たちの要望はほぼ達成されたと思えたころから、5年計画で次世代へのバトンタッチを考えました」

 

会長のバトンを渡された橋本久行さん(65)は、大山団地に暮らして26年。自治会では、例の違法駐車騒動のときに佐藤さんと共に現場で大変な思いをした同志だ。

 

「佐藤さんのすごいところは、たとえ『ぶっ殺すぞ』と言われてもひるまず、相手と向き合い、最後には納得させる胆力。

 

その背景には、豊富な人生経験と知識からくる説得力があるんです。

 

ですから、いまだに何か起きると、『佐藤さんに相談しよう、教わろう』という声が出ます。

 

ただ、あのパワーに加えてアイデアマンですから、次々に新しい施策が飛び出すのはいいんですが、ときに私ら現場はてんてこまい、なんてことも(笑)」

 

時代の流れとともに、自治会を取り巻く状況も変わりつつある。

 

「個人情報などの扱いもシビアになりつつありますし、若い人のなかには、『自治会に入って何かいいことあるの?』という声も実際に聞かれます。

 

今後は、若い世代との交流も大切と思い、すでに地方自治を学ぶ学生との勉強会なども始めていますし、近隣の自治会とのネットワーク作りなど、新しい展開も始まっています」

 

相談役となっても、前出の24時間対応でもわかるが、佐藤さんの生活は以前と変わりないようだ。

 

大山自治会ではこれから連日、8月後半に予定される夏祭りの打ち合わせが始まる。橋本会長は、

 

「コロナもあって5年ぶりの開催。昔に比べて子供の数もぐんと減っていますが、なんとか盛り上げようと、周辺の子供会やPTAにも声かけしてるところです」

 

高齢化や少子化が進むいまだからこそ、かつてのにぎわいを再現できる祭りにしようと、佐藤さんたち自治会役員は大山団地らしいイベントを実現すべく、日々、アイデアを出し合っている。

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