■自分らしく生きられない人を助けたい
寺原さんが人権擁護の問題に取り組む背景には、母親のように“自分らしく生きたいけど生きられない。そういう人たちを助けたい”という信念が根底にあるのだ。
現在、彼女のライフワークともいえる「選択的夫婦別姓訴訟」と「同性婚訴訟」の取り組みを本格的に始めたのは、2010年に独立してからだ。
「2011年に『選択的夫婦別姓訴訟』が提起され、弁護団に入りました。同年に性的マイノリティの問題に関心を持つようになり、2012年、全国の弁護士会の中で初めてLGBTQ+のためのプロジェクトチームを立ち上げ、シンポジウムを開催するなど活動を始めました」
2019年2月、同性婚訴訟が始まって以降、社会的に大いに注目されるようになってきている。
「裁判所は社会の関心の高さ、国民の意識などを考慮します。同性婚訴訟はあと2年ぐらい。今年3月に提起した第3次選択的夫婦別姓訴訟については4~5年後に、最高裁で判断が出ると思います。弁護団として、最高裁で違憲判決を勝ち取ることに全力を注ぎます」
寺原さんは、自らが立ち上げた、公益社団法人「Marriage For All Japan―結婚の自由をすべての人に」を通じて、世論の関心をさらに高める活動も続けている。
最後に、寺原さんの母親は、2000年に離婚し、現在81歳でお元気だ。
「母いわく、“間違った結婚だったかもしれないけど、あなたたちが生まれてくれたことが救い。だからつらいことだけじゃなかった”と。母の言葉は、常に初心を思い出させてくれます」
【PROFILE】
てらはら・まきこ
東京大学法学部卒業、司法修習52期。2000年、都内の法律事務所に勤務後、アメリカに留学。20’08年、ニューヨーク州弁護士登録、2010年、榎本・寺原法律事務所(現:弁護士法人東京表参道法律会計事務所)共同パートナー、2022年、選択的夫婦別姓訴訟弁護団の団長