“駆け込み寺”の庵主さん語る女性のあり方「あなたの名前は“お母さん”でも“奥さん”でもありません」
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■“人生リセット寺”で庵主さんと寺猫がいつでも待っている

 

「すごく気持ちよかったです」
「一瞬ですが、初めて、何も頭にない無の状態を味わえました!」

 

修行2日目。朝8時からの宝林堂での座禅会を終えた梶田さんら参加者がすっきりとした表情で言うのに答えて、庵主さん。

 

「足がしびれませんでしたか(笑)。座禅も写経も、行為の意味を考えるのではなくて、ただ座る、ただ書くことが大事なんです」

 

この後、梶田さんたちは庵主さんから人生指南の法話を聞き、続いて斎座(昼食)では禅宗の作法にのっとっての精進料理を体験し、すべての修行メニューを終えた。

 

これら修行の進行をサポートしたり、寺のSNSの編集などを3年前から担当しているのが、秘書兼広報担当の“ツイ担さん”(40)。

 

「庵主さんは、とにかく元気で明るい方です。最近、早朝4時半からの読経をフェイスブックで生配信する『朝のおつとめ』が好評ですが、これでいちばん元気をもらっているのは、実は庵主さん。

 

お経を終えた5時半ごろが一日のなかでいちばん元気かも(笑)。本当に修行好きなんです。3秒で寝落ちできる方なので健康面は安心ですが、貧乏寺で修理のため屋根や塀に自ら上られるのでケガだけは心配ですね」

 

今年1月に起きた能登半島地震では、直後から「被災地の女性を寺で受け入れます」というメッセージを発するだけでなく、月2ペースで庵主さんやツイ担さんが現地を訪問しての支援も続けている。

 

さらに庵主さんには今後、看護師や看取り士のキャリアを生かして取り組みたいことがある。

 

「僧侶である私のライフワークとして、終末期看護や在宅看取りのお手伝いもしていきたい。また、男女平等の時代ですが、不徹寺の歴史を考えても、私はあえて女性のための寺を打ち出していきたいと思ってます」

 

そして午後1時過ぎ、梶田さんたちを山門で見送る。この2日間をふり返って、梶田さんは、

 

「私は家族のために悩んでいたつもりでしたが、見方を変えると、私のほうが家族依存で恩着せがましくなっていたかもしれません。

 

庵主さんに言われたように、これからは、まず自分に目を向けて生活していきたい。すぐには変われないかもしれませんが、修行体験でその練習ができました」

 

梶田さんたちが山門を出ようとするまさにそのとき、2匹の寺猫たちも出てきて、一緒にお見送りする。彼女たちの背中に向かい、庵主さん、

 

「織部も白ちゃんも『おつかれさま』と言ってます! また、いつでも、うちの寺に心の粗大ゴミを捨てに来てください」

 

悩める女性たちの居場所である不徹寺を訪ねれば、いつも庵主さんの笑顔と、気ままな寺猫たちが出迎えてくれる。

 

(取材・文:堀ノ内雅一)

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