東京オリンピック・パラリンピック選手村を改修したマンション群「晴海フラッグ」周辺の路上で、謎のキーボックスが相次いで見つかっている。
この問題に対し、中央区議会議員の高橋元気氏は、キーボックスが設置されている場所にマーカーを付けたGoogleマップを独自に製作し、自身のホームページで公開している。地図によると無許可放置と思われるキーボックスの数はおよそ30個。晴海フラッグ周辺だけでなく、隣接する勝どき・豊洲地区でも発見されている。
6月下旬、本誌記者はその地図をもとに謎のキーボックスを現地で探した。すると、報道がなされた影響だろうか、半数近くはすでに無くなっていた。そして、中にはキーボックスを取り外すよう警告文が貼られている箇所も。
それでも探し回ってみると、月島警察署のすぐ脇の電柱の下に、無許可放置キーボックスを発見できた。真っ黒のキーボックスには一切の文字が書かれておらず、上部の蓋をめくると銀色のダイヤル錠が現れた。近隣住民にとっては不気味な存在に違いない。
不動産ジャーナリストの榊淳司氏は謎のキーボックスの正体についてこう語る。
「このタイプのキーボックスは不動産の内見の際によく使われているものです。通常は不動産の敷地内に置かれていますが、ガードレールや電柱などの公道に不法に置かれているものは、民泊に使われているのだと思います。
民泊は各行政区がその許可を下すのですが、中央区は『営業できるのは土日のみに限る』といった決まりがあるなど、民泊事業に大変厳しいことで知られています。晴海フラッグでは民泊が許可されていませんので、もし民泊が行われていれば『違法民泊』ということになるでしょう」
中央区は区内で届出がなされた民泊物件を公表しているが、一覧の中に晴海地区の物件は1件もなかった。晴海フラッグに限らず、この地区全体で違法な民泊が行われている可能性がかなり高いと言えるだろう。
続けて、榊氏は無許可運営の違法民泊が横行する背景を明かす。
「民泊は法整備がまだまだ追いついておらず、グレーな状況なのです。マンションの管理会社は民泊客を見つけた際、『やめてください』というお願いはできても、『帰ってください』と言うことは法律上できないんですよ。その場で警察を呼んで対応してもらうにしても、相手に『友達にちょっと貸してもらったんだ』と言われちゃったら、もうどうしようもない。マンションの部屋は個人の私有財産なので、誰を泊めようが自由ですからね。だから民泊が摘発される例ってほとんどないんです。
これは想像でしかないですけれど、晴海フラッグ周辺で違法民泊を利用している人の多くは海外からの訪日客ではないでしょうか。いまは観光客が増えて銀座や日比谷の一等地のホテルが取りづらいのでニーズがあるのだと思います。グレーゾーンなうちはやりたい放題でしょう」
記者が現地で調査をしていると、キーボックスを開け、鍵を取り出している男性の姿が。スーツケースを引いており、海外からの観光客のように見えた。
住民にとっては、言葉が通じず、素性もわからない来訪者は気味の悪い存在に違いない。今後、規制が行われなければ、セキュリティや騒音、ゴミ問題など、トラブルが多発しそうだ。