不信任決議を受けて自動失職した斎藤元彦知事(47)が返り咲いた兵庫県知事選挙から1カ月が経過。SNS運営をめぐって公職選挙法違反の疑いが指摘されていた斎藤陣営だが、12月16日には神戸地検と兵庫県警が斎藤知事とPR会社社長に対する告発状を受理した。
さらに同日には、知事選を発端とする“もう一つの波紋”にも動きがあった。
報道によれば、兵庫県警は12月中旬に、斎藤知事のパワハラ疑惑などを調査する百条委員会の奥谷謙一委員長(39)から刑事告訴されていた、「NHKから国民を守る党」の立花孝志党首(57)を任意で事情聴取するという。
奥谷氏は11月下旬に、SNS上で“奥谷氏は悪人で告発文書を作成した元県民局長の死亡原因を隠ぺいした”という虚偽の内容を投稿され、名誉を傷つけられたとして立花氏を刑事告訴していた。
立花氏といえば自らも知事選に出馬したものの、当選を目指さずに斎藤知事を支持するスタンスをとっていた。選挙期間中には奥谷氏の自宅兼事務所前の路上で行った演説で「家から出てこいよ」「これ以上脅して奥谷が自死しても困る」などと発言したことから、奥谷氏は脅迫と威力業務妨害の疑いで兵庫県警に被害届を提出したという。
立花氏は16日に更新したXで、《兵庫県警【警察】から呼び出されました!12月22日日曜日13時です!奥谷謙一委員長に対する名誉毀損罪の嫌疑です!正々堂々と真実相当性を主張してきます!》とアナウンスしている。
いっぽう斎藤知事のパワハラ疑惑などの調査を続ける奥谷氏に対して、一部から批判の対象にされていることから精神面も心配されている。12月9日に行われた理事会の後に報道陣の取材に応じた奥谷氏だが、Xでは《げっそりと痩せられていてメンタル面かなり心配》《奥谷さんつらそうだな》といった声も上がっていた。
知事選直後には本誌の取材に、「県庁の方にも色々と電話がかかってきていたようで、『奥谷の家の前におったけど、おれへんかったやないか』『奥谷の家の前におるけど、どこおんねん』といった内容もあったと聞いています」と、率直な恐怖心を明かしていた奥谷氏。
知事選から1カ月が経ち、誹謗中傷などの被害は減っただろうか? そこで本誌は12月17日、奥谷氏本人に現在の状況や心境を聞いた(以下、カッコ内は奥谷氏)。
――誹謗中傷などはまだ続いていますか?
「まだそういう電話は、事務所や議会の方にもきています。“百条委員会に対する議会の進め方に不満がある”といった声もあり、それはそれでいいかと思いますが、『クズ』『辞めろ』など誹謗中傷にあたるものもありますね。件数は1日あたり10件弱ぐらいですが、週でカウントするともっとあると思います。私も少し怖くて見れていないのですが、Xなどの方が多いのではないかなと感じています」
――仕事や生活に支障はありませんか?
「今のところは大丈夫です。ただ、これは自分の問題ですが、あまり人目に触れないように行動するようになりました。気持ち的に人の目を気にするようになりましたが、誰かに何かをされてそうなってしまったというわけではありません」
――自宅兼事務所に“アンチ”が来ることはないですか?
「はい、母や事務員さんは来客に構えてしまうことがあるようですが、いまのところ何かされたりはしていません。ただ、警察の方には頻繁にパトロールしていただいて大変感謝しておりますが、12月22日に立花氏の事情聴取があるようなので、そういったことが始まると、また何かされないかなという不安はあります」
――Xでは“痩せた”と心配する声もありますが、体調に変化はありましたか?
「たまに走ったりしていたんですが、そういう機会も減ってしまったので、体重自体はそんなに変わってはいません。ですが、気持ち的にしんどいところはあったので、顔に出てしまったのかなと思います。睡眠時もしっかり熟睡できてないと感じることがあり、気持ち的に落ち込んでいたり、疲れが出ていたりしているのかなと感じる時期はありました。でも、いまのところは平常に戻りつつあります」
――知事選をめぐってSNSで候補者らへの誹謗中傷が横行したことを受け、13日の県議会定例会で必要な法整備を行うよう国に求める意見書案が全会一致で可決されました。こうした動きをどのように受け止めていますか?
「SNSを禁止するのはよくないと言いますか、あのような空間があっていいとは私も思います。ネットの世界では、仮に間違った情報が発信された時に、訂正をしてもらえないとか、場合によってはそれをきっかけにどんどんデマが広がって被害が拡大するとか、そういうところに『責任を追求したい』といった話が出てくるかと思います。
匿名性のある言論の空間はあっていいとは思いますが、例えば何かあった時にちゃんと開示請求ができて、訂正を求めるとか、本当にひどい場合には損害賠償を請求するとか、そういう環境がもう少し整ったらいいなと思います。もし誹謗中傷などがあったときに、県レベルで開示請求などの手続きをサポートできるような制度を作るなど、そういうことが県レベルでもできるようになるといいのかなと思います。
SNS規制となれば、国レベルで議論をしてもらわないとなかなか難しいとは思うので、誹謗中傷や間違った情報があった時に県として困っている人をサポートできるような仕組み作りが、条例をきっかけに前進したらいいなと思っています」