11月7日の衆院予算委員会で、高市早苗首相(64)が台湾有事をめぐって「存立危機事態になりうる」と発言した問題。追及する野党との論戦が国会で繰り広げられるなか、“見直した”と株を上げている人物が――。
存立危機事態とは、日本と密接な関係にある他国が武力攻撃を受け、これによって日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態を指す。’15年に安倍政権下で成立した安全保障関連法で設けられ、自衛隊が集団的自衛権を行使できる前提条件となっている。
発端は7日の予算委で、立憲民主党・岡田克也常任顧問(72)が高市氏に存立危機事態の具体例を質問したこと。高市氏は台湾有事で中国による武力行使があった場合に「戦艦を使って武力の行使も伴うものであれば、どう考えても 存立危機事態になりうる」と言明。「実際に発生した個別具体的な状況に応じて、政府がすべての情報を総合して判断する」と説明したいっぽう、「最悪の事態も想定しておかなければならない。それほど台湾有事は深刻な状況にいま至っている」との認識を示していた。
「どのような状況が存立危機事態に当たるかどうか、歴代首相は明確に見解を示すことを避けてきました。高市氏は踏み込んで具体例を挙げたかたちですが、見方を変えれば相手に手の内を明かすことになり、抑止力の低下につながりかねません。自身の考えを率直に語ったことは評価できるといえますが、政府が示してきた従来の見解と整合性が取れなくなる可能性もあるでしょう」(全国紙記者)
高市氏の存立危機事態をめぐる発言は、10日の予算委でも議題に上がった。
立憲民主党・大串博志衆院議員(60)は、高市氏が台湾有事について具体例を挙げながら「戦艦を使って武力の行使も伴うものであれば、どう考えても 存立危機事態になりうる」と述べたことを問題視。「総理として国会のなかでの発言なので極めて重い」「他国の反応も懸念される」と指摘し、取り消し、撤回を求めた。
しかし高市氏は、台湾有事に際して「最悪のケースを想定した答弁」とした上で、「いかなる事態が存立危機事態に該当するかは、実際に発生した事態の個別具体的な状況に則して、政府がすべての情報を総合的に判断する」と繰り返し説明。
それでも大串氏が引き下がることはなく、その後も高市氏に取り消し、撤回を要求。高市氏は「政府の従来の見解に沿ったものなので、特に撤回、取り消しをするつもりはない」と反論しつつ、「反省点として、特定のケースを想定したことについては、この場で明言することは慎もうと思う」と意向を示していた。
