■就職氷河期世代が「原則3割」の当事者に
総合診療医の舛森悠さんも、負担が増えると「薬を減らそう」「通院をやめよう」と考える人が増え、結果的に「現役世代の負担も増やす」と警鐘を鳴らす。
「高血圧や糖尿病などの慢性疾患は、治療をやめてもすぐに症状が出るとはかぎりません。
しかし放置すれば、脳卒中や心筋梗塞、腎不全などの重大な病気につながるおそれがあります」
そうなれば、一人で暮らせていた人も、入院や介護が必要に。
「結果的に医療費や介護費がかさみ、子どもである現役世代の経済的・時間的負担も大きくなるのではないでしょうか」(舛森さん)
さらに、もうひとつ見過ごせないのが「“外来特例”の見直しだ」と、前出の本並さん。
外来特例とは、現役並みの所得のない70歳以上が対象になる外来診療の上限制度のこと。
たとえば、外来で抗がん剤治療を受けた結果、自己負担額が月5万円になったとしても、70代以上の自己負担額は、原則月1万8千円までですむ。
「ところが、日本維新の会や財務省は、外来特例の廃止も主張しています。実現すれば、外来治療を受けている高齢者の負担は一気に増えてしまいます」(本並さん)
月約13万円の年金で一人暮らしをするBさん(83)は、3年前に肺がんの手術を受けたが、昨年再発。現在は、肺がん治療で広く使われている経口抗がん剤「タグリッソ」を服用中だ。体調は安定しており、地域の清掃ボランティアにも参加するなど元気に過ごしている。
だが、近所に住む長女のCさん(60)は、こう懸念を示す。
「タグリッソは1錠約2万円もするんです。今は外来特例のおかげで月の負担は1万8千円ですんでいますが、外来特例が廃止され、さらに3割負担になれば、自己負担額は現役世代並みの月約8万円まで跳ね上がります。父の年金だけではとても払えないので、私が援助せざるをえません。でも正直、それをいつまで続けられるのか」
Bさんの場合、外来特例が廃止され、かつ3割負担になると、年間約75万円の負担増となる。さらに、自宅で緩和ケアを受けることも難しくなる可能性が。
「訪問診療は外来より費用がかかります。利用しているのは、もともと医療機関に通うのが難しい方が多い。そこに経済的な負担まで重なれば、人生の最期に必要な医療を受けられなくなる人も出てくるでしょう」(舛森さん)
もちろん、医療のむだや過剰な受診は見直していく必要がある。
しかし舛森さんは、「世代間の対立で語るべき問題ではない」と、こう指摘する。
「かりに段階的に導入されれば、将来的に3割負担の当事者になるのは今の氷河期世代や50~60代からです。『高齢者ばかり優遇されている』という声もありますが、いずれ自分がその当事者になることも忘れてはいけないと思います」
いずれ誰もが当事者になる問題だけに、ていねいな議論が求められる。
画像ページ >【試算あり】高齢夫婦はこんなに負担増に(他1枚)
