「通院をあきらめざるをえない高齢者が増えるのでは……」
多くの医療関係者からそんな懸念の声が。その理由は、自民党と日本維新の会が社会保障改革に関する実務者協議で検討している高齢者医療制度の見直しにある。現在、70~74歳の医療費の窓口負担は原則2割、75歳以上は原則1割だ(一部の高所得者を除く)。
これを両党は、段階的に「原則3割」へ引き上げる方向で協議を進めており、’26年度中に具体的な制度設計をまとめる方針だという。
「自維政権は、現役世代の負担軽減や、世代間の公平性を理由に挙げていますが、本当に現役世代の負担軽減につながるか、疑問視する声もあります」(全国紙記者)
自民党と日本維新の会による18日の実務者協議では、維新の会が窓口負担の「原則3割」引き上げを求めた一方、高齢者の反発を懸念する自民党は慎重な姿勢を見せている。
原則3割になると、「かえって医療費が増えるのではないか」と指摘するのは、全国保険医団体連合会(保団連)の事務局次長の本並省吾さんだ。
「75歳以上の1割負担の高齢者の多くは、住民税非課税世帯や年収200万円未満の低所得者です。そうした人たちまで一律に3割負担になれば、受診控えが増え、重症化してから病院に駆け込むことになる。結果として、医療費はむしろ増えてしまう可能性があります」
医師の木村知さんも、「高齢患者の多くは、高血圧や糖尿病、呼吸器疾患や認知症など、複数の慢性疾患を抱えて通院している」として、3割負担になった場合の経済的負担の大きさを懸念する。
たとえば、夫(78)と2人で月約23万円の年金収入で暮らすAさん(76)の場合を見てみよう。
Aさんは高血圧と2型糖尿病、骨粗しょう症のため、降圧剤2種類と糖尿病治療薬2種類、骨密度を増やす薬を服用している。一方、夫は3年前にアルツハイマー型認知症と診断され、進行を抑える薬2種類に加え、高血圧と前立腺肥大症の治療薬も服用している。夫婦ともに月1回通院し、血液検査なども受けている。
現在は1割負担のため、窓口で支払う月額の医療費は、薬代、診察代、検査代等を含め、Aさんは約1千850円、夫は約1千460円。
しかし、3割負担になれば、Aさんは月約5千550円、夫は月約4千380円に跳ね上がる。年間で見ると、夫婦の医療費の合計は約4万円から約12万円に増え、約8万円もの負担増となる。
