経済ジャーナリスト・荻原博子さん(写真:本誌写真部) 画像を見る

昨年、自民党総裁選挙に勝利した高市早苗氏(65)は「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」と宣言しました。今年2月の衆議院議員選挙に向けては「国論を二分する政策に果敢に取り組む」と訴え、「何かやってくれそう」と期待した人も多かったと思います。

 

ですが、2月18日から始まった第221回特別国会では、与党が圧倒的な“数の力”でゴリ押し成立させた法律ばかりが目立ちました。

 

国会の序盤には、国論を二分する政策の1つ「国家情報会議設置法」がありました。外交などの情報収集や分析を行うインテリジェンス機能を強化し、司令塔となる国家情報会議を新設するものです。

 

野党は国による監視が一般市民にも広がり、プライバシー侵害の恐れを追及しましたが、与党は理由の説明もなく「懸念は当たらない」の一点張りで押し通しました。高市首相が目指す「スパイ防止法」への足掛かりとしたいのでしょう。

 

その後は「国旗損壊罪法」「改正刑事訴訟法」「改正皇室典範」という“高市カラー”の強い3法案の審議に注目が集まりました。国旗損壊罪法案は、14年前に高市首相が議員立法で提出するなど思い入れが深く、国家情報会議設置法に続いて肝いりゴリ押しの3法案です。

 

とはいえ、過去40年間で国旗損壊罪に当たる事例はわずか4件。すべてが刑法の「器物損壊罪」で問題なく処罰され、新たな法律を作る必要性は見当たりません。

 

78年ぶりに改正された「刑事訴訟法」は再審制度の見直しが柱です。冤罪逮捕から無罪獲得までに58年もかかった「袴田事件」の反省を踏まえ、検察が握る証拠の開示や、再審開始を遅らせる検察の不服申し立て「抗告」の禁止などが盛り込まれるはずでした。

 

しかし法務省は消極的で、たとえば抗告は全面禁止ではなく原則禁止になるなど骨抜き状態での成立となりました。

 

さらに「改正皇室典範」も注目されました。朝日新聞の世論調査(7月18?19日実施)でも、旧宮家からの養子を「納得できる」は42%、「納得できない」は43%。養子の子が男子なら皇位継承資格を持つことに「納得できる」は43%、「納得できない」は45%と、まさに国論を二分!

 

国は皇族数確保が喫緊の課題と言いますが、次代の皇位継承者には若い悠仁親王もいます。時間をかけて議論すべき問題をこれほど急ぐのは、実の妹が寬仁親王妃である麻生太郎氏のご機嫌取りではないかと勘繰りたくなります。

 

これらは7月17日に駆け込みで成立。その陰で私たちの暮らしを徐々に追い詰める“改悪法”をひっそり成立させているのも、見逃してはいけません。

 

たとえば改正健康保険法。成分や効果が市販薬に似たOTC類似薬の一部を保険適用外に。また、ジェネリック医薬品があるのに先発薬を選ぶと特別料金の上乗せなど、薬代の負担が上がります。

 

加えて、衆議院をスピード通過した予算案に「高額療養費制度の自己負担引き上げ」が含まれました。昨年、石破前首相は引き上げを撤回し謝罪しましたが、2026年8月から引き上げが実施されます。最終的に30万筆を超えた反対署名も“どこ吹く風”なのでしょう。

 

改正郵政民営化法も腹立たしいです。民営化前の郵政公社は国の稼ぎ頭だったのに、民営化に踏み切った結果、日本郵便は赤字企業に転落。来年度から毎年650億円の公的資金が注入されます。何のための民営化だったのでしょう。

 

改正個人情報保護法も由々しき問題です。AIモデルの開発など個人データの収集に「本人の同意を不要」とする特例ができました。隠しておきたい病歴や犯罪歴なども知らぬ間に提供される可能性が。

 

これまで国の情報漏洩問題を多く見てきた私たちは、個人情報が漏れる不安がぬぐえないのです。

 

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経済ジャーナリスト

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