■大阪府「許可は国交省のホームページで確認できる」
本誌は、大阪府建築振興課に見解を尋ねた。担当者は個別の調査や処分については回答できないとしたうえで、一般論として、次のように説明した。
「未払いがあるかないかというところはいったん置いて、無許可の業者と契約して工事をされることは、建設業法違反に問われる可能性があります」
あくまで建設業法に基づいて対応しているという。さらに担当者は、取引先が建設業許可を取得しているかどうかについて、「国土交通省のホームページで調べられる」と説明した。
「取引をする業者がきちんと許可を持っているかどうかを確認したうえで、法令を守って契約していただきたい。そこがなされていないのであれば、処分するということには、やはりなるのかなと思います」
しかし、万博工事では開幕直前まで図面や工事内容が変更され、契約時点では工事全体の金額すら確定できない現場が少なくなかった。そんななか、とにかく開幕に間に合わせることを求められていた。
本誌が、「各業者が厳密に許可の有無を確認し、断っていたら万博は開幕に間に合わなかったのではないか」と尋ねると、担当者はこう答えた。
「法を破ってまで協力してくださいと言ったわけではないんですよね」
では、無許可業者が万博工事の重層的な下請け構造に入り込み、高額な工事を受注していたことについて、大阪府や万博協会に監督責任はないのだろうか。重ねて尋ねたが、担当者は「そこはわからない」と答えるにとどまった。
■「元請けには現場全体を監督する責任がある」
万博の未払い問題を国会で繰り返し追及してきた、共産党の辰巳孝太郎衆院議員(50)は、被害を受けている業者だけが処分を受ける可能性について、こう見解を示す。
「Aさんの言い分は無理もありません。自分は代金を受け取っていないのに、自分が使った業者にはきちんと支払っている。言ってみれば、自分だけが被害を引き受けているわけですから」
辰巳議員によれば、建設業法は違反業者を処分するためだけではなく、多重下請けのなかで起きる未払いから、下請けを守るための法律でもあるという。
「元請けは現場の状況を把握し、二次、三次、さらにその下の業者で未払いが起きないように監督する責任を負っています。元請け自身が直接起こした未払いでなくても、監督行政庁は建設業法41条に基づき、特定建設業者に対して立て替え払いを勧告することができます。まして今回の万博では、元請けそのものが未払いを起こしているケースも。その責任は重大にもかかわらず、元請けは処分されていません」
辰巳議員は、建設業法を理由に末端業者だけを処分するのではなく、本来は大元の企業に対してこそ、法律を厳格に適用すべきだと指摘する。
辰巳議員がとりわけ問題視するのが、セルビア館、ドイツ館、ルーマニア館、マルタ館の元請けを務めたフランス系イベント会社のGLイベンツ・ジャパンだ。同社を巡っては、複数の下請け業者が工事代金の支払いを求めて訴訟を起こしている。
「GL社の未払い問題は一つや二つではありません。『建設業法に基づいて対応する』と言うのであれば、なぜ大元には使わないのでしょうか。まず、責任の大きいところに法律を守らせるべきです」
■「2年前から間に合わないとわかっていた」
さらに辰巳議員は、無許可業者が万博工事の下請け構造に入り込み、未払い被害が拡大した責任は、「元請けだけでなく万博協会、大阪府、国にもある」と指摘する。
「開幕の2年前から、このままでは間に合わないとわかっていました。吉村知事自身が建設業界に頭を下げて協力を求めたのですから、その後に契約した現場が、工事を完遂できる体制なのか、協会や大阪府、国が確認すべきでした」
大阪府の「法を破ってまで協力してほしいと言ったわけではない」との回答については、こう反論する。
「現場の人たちも、何度も手を引こうと考えていました。それでも、自分が途中で投げ出せば開幕に間に合わないと、職人としての責任感で完成させた。その人たちに、終わった後で『許可を確認しなかった側が悪い』と言うのは、あまりにもひどい」
辰巳議員は、「まず万博協会が未払い分を立て替え、その後、元請けなどから回収する仕組みをつくるべき」と主張する。
問われるべきなのは、現場全体を監督する立場にあった元請けと、危うい工事体制を知りながら万博を進めた協会、行政の責任ではないだろうか。
画像ページ >【写真あり】解体が進む万博跡地の大屋根リング(他2枚)
