「家族で映画を作ることに挑戦したかったんです。後にも先にも、家族4人で作るのは、この作品しかないと思った。信頼し合っている家族と、『いい映画を作りたい』という共通の思いがプラスに働き、想定外の深みのあるよい作品になりました」

 そう語るのは、映画『0、5ミリ』が現在公開中の安藤桃子監督(32)。父の奥田瑛二(64)がエグゼクティブ・プロデューサー、母の安藤和津(66)がフードスタイリスト、妹の安藤サクラ(28)が主演を務め、サクラの義理の両親である柄本明(66)と角替和枝(60)も出演している。一族総出で作り上げた渾身の一作だ。

 原作は安藤監督が書き下ろした同名小説。’06年に永眠した母方の祖母・昌子さん(享年82)の在宅介護の体験が原点になっている。

「家族4人で向き合った介護だったからこそ、この作品は家族そろって取り組みたいと強く思っていました。食事は生きることと直結しています。祖母の料理で母は育ち、母の料理で私たち姉妹は育った。生きることをつなぐという意味でも、フードスタイリストは母にしかできない仕事だったと思っています」

 映画製作に没頭してきた父と、しっかりものの姉さん女房の母。だが、意外にも自由奔放なイメージのある父より、母のキャラクターのほうがはじけているのだと安藤監督は話す。

「実は母のほうがファンタジックで、ブッ飛んでるんです。真面目で理路整然とテレビでコメントしているときは、頑張ってるんじゃないですか(笑)。強い女性を表す言葉を土佐弁で『はちきん』と言いますが、母はまさに『はちきん』。8つの金玉を握っている女という意味から『はちきん(八金)』といい、4人の男を手玉に取っているってことなんですよ。ウチの母の強さといったら、八金どころか、百金くらい!」

 そんな強さと優しさを兼ね備える母に、家族や夫婦の問題を乗り越え、逆境に打ち勝つコツを学んだのだという。

「母がなぜいろいろなことを乗り越えられたかというと、最終的になるようにしかならない、という陽気なポジティブな考え方をしているからなのかなと思います。人生は思うようにならないことばかりですが、ケ・セラ・セラな考え方というか……。どん底を知っているからこそ真逆に振り切れるパワーがある。それで、楽しむときはすべてを忘れてその場を楽しむことができるんですよね」

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