「1月27日に満80歳になりました。私は数年前から”終活”を始めています。夫の大島(渚・監督)が亡くなって、今年三回忌を迎えました。17年間大島を支え続け、そして最期を看取ったことで私の死生観にも変化がありました。どう変わったかというと、自分の死に向かってどう生きるべきか真剣に考えるようになりました。それが終活を考えるようになったきっかけでもあります」

そう語るのは女優・小山明子さん。夫・大島渚監督(享年80)とは60年に結婚。以来、おしどり夫婦として知られてきた。大島監督は96年に脳出血で倒れ、小山さんはその後17年にわたり献身的に介護を続けてきた。

「時期的には75歳ぐらいかな。大島の具合が悪くなって、彼の写真(遺影)を選ばなくてはいけない……と思ったあたりからですね。自分がどういう最期を迎えたいのか、またどうしてほしいのか――。私は、折に触れ息子たちに自分の考えを伝えています。たとえば、お葬式は身内や親しい人たちだけの”家族葬”でいいのよと。葬儀のときに使う写真も用意しました。それから延命措置はしなくていい。これは、大島もしませんでした」

 現在は至って元気な小山さんだが、自身が介護を受ける立場になったときのことも、息子たちに言ってあるという。

「もし認知症になったら施設に入れて、と伝えてあります。仮に在宅で介護ということになれば、私の面倒を見るのは息子たちのお嫁さんでしょうから。私は若い人たちの世話にはなりたくないし、介護はプロに任せるべきだと思っています。それにはお金が必要ですけど、それもきちんと用意しています」

80歳を迎えた小山さんに「80代をどう生きるか?」を聞いてみた――。

「私は、大島の介護をとおして、介護一辺倒では自分もだめになる。自分の人生をしっかり、楽しく生きることが大事だということを学びました。これからについては、いままでやらなかったことをやりたいと思っています。だから息子たちにお金は残さないし、その代わり負担も迷惑もかけない。『あなたたちは、自分たちの生活をしなさい』というのが私のスタンスです。私は”終活”で大事なのは、自分の人生をどう締めくくるかだと考えています。あと何年生きられるかわかりませんけれど、やりたいことをして残りの人生を輝くものにしたい。そして、大島のもとに旅立ちたいと思っています」

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