3月24日付のニューヨーク・タイムズ紙への寄稿で卵巣と卵管の摘出手術を受けたことを明らかにしたアンジェリーナ・ジョリー(39)。彼女は2年前の’13年には、両乳房の全摘手術と再建手術を受けたことを告白し、話題になっていた。

 彼女の告白により、勇気を与えられた日本人の女性もいる。東京都在住の女性・太宰牧子さん(46)だ。

「卵巣摘出となれば、女性らしさが失われてしまうのではないか、と躊躇してしまうものです。ハリウッド女優として注目される存在であるにも関わらず、あえて摘出手術を公表した彼女の勇気はすごいと思います。“遺伝性がん”の存在と治療の選択肢があることを、世間に知らしめようとする彼女の強い意志が感じられます」

 アンジーのように、がん抑制遺伝子に変異があるとき、通常よりも若く、繰り返しがんにかかりやすくなるという。実は太宰牧子さんも、遺伝性がん患者なのだ。

「’08年には姉が卵巣がんで他界しました。まだ40歳だったのに……」

 太宰さんは姉が亡くなる前、おい(19)やめい(16)の面倒を見るために、姉の自宅側に転居していた。

「姉の死から3年後の’11年、当時43歳だった私も左胸にしこりを発見したのです。6ミリほどの大きさのがんでした。当時通院していた病院の医師は、『初期ですし、内視鏡手術で腫瘍を摘出すれば、乳房を切らなくても大丈夫でしょう』と、言ってくれたのですが、私は不安でした。そこで『がん研有明病院』(東京都)で遺伝子検査を受けたところ、“遺伝性のがん”と判明し、そのまま左胸の全摘手術を受けました」

太宰さんは姉が遺したおいやめいにも、がんであることは伝えたという。

「『おばさんも死んじゃうの?』と、うっすらと涙を浮かべた顔は、いまも忘れることはできません。彼らには、これ以上つらい思いはさせたくありません。だから私は絶対にがんで死にたくはないのです。しかし、私には右胸と卵巣にがん発症のリスクがあります。もちろん定期検査を受け続けていますが、今後切除すべきかどうか、決めかねているのが現状です……」

同じ病気の仲間にも相談したくて患者会を探したが、存在しなかった。そこで太宰さんは’14年5月、自ら遺伝性乳がん・卵巣がん患者の会『クラヴィスアルクス』を設立した。当時は、アンジーが乳房摘出を公表した1年後のことだ。

「アンジーの決断に対し、『まだ健康な乳房を切除してしまうなんて』という非難も多かったですよね。遺伝性がんについて、もっと社会の理解を広めたいというのも設立理由の1つでした」

そして太宰さんは今年1月、遺伝性がん患者として、日本で初めて実名を公表したのだった――。