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「彼から受け継いだパッションで、私、もうじき69歳になるのに、元気になっちゃって(笑)」

 

こう語るのは、ハリウッド映画『ラスト サムライ』に渡辺謙を、NHK連続テレビ小説『マッサン』にはシャーロット・ケイト・フォックスを紹介し、キャスティングディレクターとして日米の橋渡しをしてきた奈良橋陽子(68)。

 

“彼”とは志半ばにして、昨年5月に壮絶な闘病の末、54歳の若さで大腸がんで亡くなった今井雅之さんだ。今回は彼の原作・企画・脚本による映画『手をつないでかえろうよ〜シャングリラの向こうで〜』の監督を務めた。

 

「本当はね、主役は雅之の予定だったの。だけど病状が快方に向かわなかった……。だから、彼が喜んでくれるキャスティングをしました」

 

別所哲也や藤田朋子ら、学生時代に奈良橋が総監督の東京学生英語劇連盟で今井と知り合い、熱い青春を過ごした顔ぶれだ。主演の川平慈英は今井のアパートでよく演劇論を戦わせた仲。

 

「ジエイは撮影現場でもポケットに雅之とのツーショット写真を忍ばせていたの。SMAPの中居正広さんも忙しいなか友情出演してくれました」

 

物語の主人公は軽度の知的障害者・真人(川平)。同じ障害がある咲楽(七海)と出会い、やがて結婚。しかし、ある事件から咲楽を守るために犯罪に手を染めてしまう。その後、真人は咲楽と新婚旅行で行く約束をしていた伊勢神宮を目指し旅に出る。途中から見知らぬ女性・麗子を助手席に乗せ、行動を共にしながら数奇な人生を回想していく−−。

 

今井さんの代表作でありライフワークだった『THE WINDS OF GOD』同様、“国や人種や宗教が違うだけで、同じ人間がなぜ殺し合うのか。生きるとは?神とは?”と訴えかけてくる。

 

「雅之の作品の魅力は“生と死、愛”を深く考えさせる点。20代だった彼が演劇・映画『THE WINDS OF GOD』の脚本を書くに当たって、一緒に元特攻隊員の取材を重ねました。そのおかげで日本を掘り下げることができたと思う。目に見えない大切なものをもらって、私も何事も最後まで諦めず、めいっぱい生きていこうと思っています」

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