連続テレビ小説『とと姉ちゃん』の第16週は、昭和21年。終戦から一年以上経っても、国民の生活は困窮をきたしていた。常子(高畑充希)と花山(唐沢寿明)は、闇市の殺伐とした光景を見ながら、庶民の目線を持って暮らしを変えていこうと決意。まずは衣服に関する企画を創刊号の目玉として取り上げる計画を立てる。一方、鞠子(相楽樹)と美子(杉咲花)は読者の信頼を得るためと銀座で事務所を探す。無名な出版社が信用を得るためには、東京の中心にある銀座に事務所を構えるべきだと花山が主張したからだ。鞠子と美子は、何とかビルの一室を割安に借りることに成功する。

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事務所の準備を進める常子たち。しかし、花山は知恵の輪に夢中で、一向に企画を発案する気配がない。常子たちが困惑していると、綾(阿部純子)が金策に来る。切羽詰まった様子で、お金を貸してほしいと頭を下げる綾。事情を知った常子は金を工面し、後日綾の家を訪ねる。綾は仕事で不在だったが、母の登志子(中村久美)の話では、新橋の食堂で配膳の仕事をしているという。近ごろの綾は以前と変わり、息子の衣服のほころびも気づかないと心配する登志子。そのころ、花山は一人、闇市を歩いていた。壁に斜めに貼られたポスターを見つけ、真っ直ぐに貼り直す花山。ポスターに書かれた洋裁学校の受講生募集の文字に目を留める。一方、銀座の事務所では、鞠子が水田(伊藤淳史)の訪問を受けていた。水田は、この会社で自分を雇ってほしいと頼む。常子たちが作ろうとしている雑誌は、「今、世の中に必要な雑誌だ」と。常子は、登志子に聞いた綾の職場を訪ねる。しかし、そこは食堂ではなくカフェ。綾は苦しい生活を支えるため、派手な衣装を身にまとい男性客に接客していた。常子に見られ、気まずい様子の綾。愕然とする常子を店の裏口に連れて行く。「心配かけてごめんなさい。でも、母と息子が食べていくには働くしかない」と綾。常子がお金を渡すと、必ず返すと約束する。

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事務所に戻った常子は、「我々が雑誌を届けたいのは庶民。戦争で一番酷い目に遭ったのは庶民だ」という花山の言葉を反芻する。出社した花山に綾のことを話すと、カフェで働く女性たちの服装について矢継ぎ早に質問する花山。何も答えられない常子を、取材をする絶好の機会を逃したと叱責する。常子は綾に頼み込み、鞠子と美子を連れて、カフェの部屋裏で取材する。カフェで働く梢(佐藤仁美)たちは、女性の役に立つ雑誌を作りたいという常子たちの話を聞き、「自分たちには、服を作る余裕などない」と一蹴する。布がないのはもちろんだが、洋裁学校で特別な技術を学ばなければ作ることもできないというのだ。一方、洋裁学校を取材していた花山も高価なミシンや布地でしか教えていない現状を知る。特別な技術や知識が無くても洋服が作れればと試行錯誤する常子たち。そんな折、花山は、家で妻の三枝子(奥貫薫)が娘に新聞紙をかぶせて散髪をする様子を見て、ふと何かを思いつく。机に向かって、スケッチを始める花山。翌朝、「和服から洋服を作る方法」を考えたと小橋家に駆け込んでくる。花山が思いついたのは、「直線裁ち」という方法だった。布を直線に切るだけで型紙もいらないし、布地の無駄も出ない。難しい技術もいらないこの方法は、着物を解いた布から洋服を作ることができる画期的なやり方だった。「この国の衣服不足に役立つ。和服で洋服を作るんだ!」と花山。常子たちは、この企画を目玉に創刊号を作ることに決める。

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常子は、教えたい人がいると綾の働くカフェに向かう。花山に教わった直線裁ちの方法で、反物や浴衣を洋服へと作り変えていく常子たち。ワンピースを着た梢たちから笑顔が溢れ、便利なことを教えてくれたと感謝する。綾にいたっては、「こんなに晴れやかな気持ちになったの、本当に久しぶりだわ。忘れてはいけないと思った、どんなに惨めでもオシャレしたい気持ちだけは……」と目を輝かせる。久しぶりに笑顔を取り戻した綾を見て、女性として豊かな心を持つことの大切さを感じ入る常子。花山は、そんな女性たちの様子を見ながら、常子や綾たちをモデルにすることを思いつく。「市井の人間が着てこそ、直線裁ちの良さが伝わる」と。こうして常子たちの作る雑誌は少しずつ完成へと近づいていく。花山は常子に自分の描いたイラストを見せ、雑誌の表紙に使うと言う。「私たちが目指す豊かな暮らしがここにあるような気がする」と常子。「この一冊はあなたの暮しに寄り添って息づいています」。常子は、花山の一文から抜粋し、雑誌の名前を『あなたの暮し』と決める。

それから4ヶ月後、ついに雑誌の発売の当日。鞠子や美子は落ち着かない。しかし、結果は大成功。常子が出した新聞広告が功を奏し、全国から購入を依頼する書留が殺到する。売り上げが伸びるにつれ、街中に直線裁ちの服を着た女性が増え、ひそやかなブームとなる。

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好評を受けた『あなたの暮し』創刊号。目標は1万部だという常子に、花山は、「目指すは100部だ!」と言い切る。そんな花山に君子は、なぜ、そんなに洋服に詳しいのかと尋ねる。花山は、オシャレだった母親の影響だと話し、母の死後は、長兄としてきょうだいの面倒を見てきたという。話を聞いた美子は、母親代わりの兄だから”かか兄ちゃん”。「とと姉ちゃんの常子といい組み合わせ」だと笑い合う君子たち。ところが、そこに、洋裁学校の講師たちがクレームにやってくる。以前、花山が取材した校長の小山内(ふせえり)は、「直線裁ちは許せない」と言い、洋裁の技術などいらないと書かれては、営業の妨害だと花山に食ってかかる。常子は、そんなつもりはないし、余裕のない人たちに洋服の作り方を届けることもやめないと言い返す。花山は、洋裁学校がムキになるのは、それほど直線裁ちが脅威で、「良いものだということだ」と笑い、常子たちを激励する。

すると今度は、綾が母と息子とともに事務所に訪ねてきた。服を作りながら、母とも久しぶりに会話が弾んだと嬉しそうに話す綾。生活に必死で息子の洋服に穴が空いていることも気付けなかったが、服を着てから「気持ちが楽になった」と微笑む。常子は、自分たちの作る雑誌が多くの女性たちを笑顔にする、と改めてやりがいを感じるのだった。

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常子はもっと売れる雑誌にするために、直線裁ちの講座を開くことにする。雑誌だけで十分だと考える花山はあまり気乗りしないが、常子は「お金と話題作りのためだ」と説得する。講座を開き、それが記事になれば読者が増えるし、受講料が入れば次号をより充実させられる、と。常子は、新聞社との共同開催を計画する。新聞に受講者募集の記事が掲載されると、あっという間に定員オーバーになった。常子たちの仕事を支えたいと入ってきた水田も全面的に協力し、講座当日を迎える。会場には、美子がこの日のために考えた新しいデザインの洋服も飾られた。会場内に新聞記者とカメラマンを呼びこむ常子。しかし、講座が始まる時間になっても、受講者は一人も姿を現さない。常子たちが、原因がわからず、戸惑っていると、以前、事務所にやってきた洋裁学校の小山内たちが現れる。直線裁ちの講座を新聞広告で知り、洋裁学校の授業の参考にしようと思ってやってきたという。会場を見回し、参加者がいないことを冷やかすと、笑いながら帰って行く小山内。花山は、小山内が講座を妨害するために、大量のハガキを一度に出して席を押さえたのだろうと言う。みな、生きるためには何でもする。「恨むなら、この時代を恨め」と花山。さらに、常子に今回のことは、社長として今後の糧にしろ、と戒める。「欲をかいては足をすくわれる」と花山。鞠子や水田たちに謝る常子は、改めて、商売の厳しさを思い知らされるのだった。

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第17週(7月25日~30日)は、常子(高畑充希)たちが創刊した『あなたの暮し』は、順調に売り上げを伸ばす。常子と花山(唐沢寿明)は、次号の特集として「住まい」を取り上げることに決める。そんな折、女学校時代の恩師・東堂(片桐はいり)から出版社に手紙が届く。常子が訪ねてみると、東堂は手狭な物置に夫・泰文(利重剛)と二人で暮らしていた。東堂に何か恩返しができないかと悩む常子や鞠子(相楽樹)たちに、花山は妙案があると息巻く。同じ頃、君子(木村多江)を訪ねて宗吉(ピエール瀧)と照代(平岩紙)が現れる…。

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