連続テレビ小説『とと姉ちゃん』の第17週は、昭和22年の初夏。常子(高畑充希)たちが創刊した『あなたの暮し』は、「直線裁ち」のヒットで3万部を超える売上げを達成する。販売部数の増加に伴い、経理の経験を買われた水田(伊藤淳史)が正式に入社。もう一人、庶務を担当する岡が加わる。常子と花山(唐沢寿明)は、次号の特集として「住まい」を取り上げることに決める。国内では深刻な資材不足から、12坪以上の住宅の新築や増築を禁止していた。そこで、バラック生活を余儀なくされる人たちのために、少しでも快適に過ごせる知恵や工夫を紹介しようというのだ。そんな折、女学校時代の恩師・東堂(片桐はいり)から出版社に手紙が届く。常子が訪ねてみると、東堂は台所もないような手狭な物置に夫と二人で暮らしていた。

image東堂は、直線裁ちが気になって、『あなたの暮し』を手に取ったら、常子たちの名前を見つけたという。「とても私の暮しに役に立っています。これは、女性の友であり、同志です」と東堂。感激する常子は、東堂に教えを胸に奮闘していると話す。「『何事も、女性だからといって恐れずに、挑戦することが大切です』。先生のあの言葉があったから、私は、自分で出版社を起こそうと決意できたのだと思います」と。50歳になった今も教師をしているという東堂は、体の許す限りあと50年は教職を続けると宣言すると「こんなに楽しい時間は久しぶりだわ」と笑う。しかし居心地の良い駒込の家を思い出し、「まさか、こんな暮しになるなんて……」と表情を曇らせる。この東堂との再会が、雑誌の新たな企画につながっていく。

 

常子は、鞠子(相楽樹)と美子(杉咲花)とともに再び、東堂の家を訪ねる。東堂の夫・泰文(利重剛)は、常子たちを家に招き入れたものの、「どうして呼んだ。こんな家、人に見せられたものではない」と東堂を咎める。聞けば、夫は戦地で腕を負傷したこともあって人が変わったように塞ぎこんでいるという。東堂は、なんとか夫を明るく変えたいと言い、「挑戦よ、挑戦!」と息巻く。しかし、こんな狭い部屋では、夫との会話もないと気を落とす。何か恩返しができないかと悩む常子や鞠子たち。すると花山は、次号の住まい特集のためのいいネタを探してきたと目を輝かせる。東堂の家の模様替えをして、その様子を雑誌に載せるというのだ。東堂は「狭い場所で耐えている人たちが快適に暮らすための知恵をふんだんに盛り込んだ家を提示する」という花山の力強い言葉に感銘を受け、常子たちに協力することを快諾する。

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模様替えの希望を聞くと、夫のための本棚と椅子と机が欲しいという。常子たちは、狭い空間にどうしたら棚や机が置けるのか、と頭を悩ます。闇市で家具を見て歩くものの、高値で手が出ない。一方、花山は気分転換だと言って出かけたまま何日も会社に現れないどころか、常子が闇市で花山を見つけると知恵の輪遊びに興じていた。目当ての家具が見つからないと話す常子に「読者が手に入れられるものでなければ紹介する意味がない」と説教する。しかし、そう話す花山自身もアイデアが浮かばない。闇市をあてもなく歩く常子たち。そんななか、店先に積まれた果物箱を見て、花山は何かを思いつく。果物箱を30個も買いこんだ花山は、事務所に戻ると果物箱を積み重ねていく。呆気にとられる常子たちだが、少しは自分で考えろという花山の言葉に刺激され、常子はあるアイデアを思いつく。

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翌日、東堂宅では模様替えが始まる。箱が連結され出来たのは、東堂が望んだソファや机などの家具。しかも用途に応じて形が変化するという、狭い住宅に便利な機能を持っていた。「果物箱でこんなことができると思わなかった」と絶賛する美子。常子はその出来栄えを褒めつつも、「次は、私たちのアイデアをご覧いただきたい」と言う。常子曰く、「家をより快適するもの」。期待を膨らませる東堂。やがて模様替えが完了し、玄関戸が開くと、「これがあのお部屋?」と目を疑う。常子たちは木箱の表面にきれいな紙を貼り、テーブルクロスをかけ、見た目にも美しい家具を完成させた。女性ならではの視点に感心する花山。しかし、それはかつて東堂が教えてくれたことを元にした工夫だった。デパートの包装紙を本のカバーしていた東堂は、ささやかな工夫で小さな幸せを生むことを常子たちに伝えていたのだ。

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笑顔の戻った泰文を見て、涙を浮かべる東堂。「このお部屋は、先生からご主人への贈り物です」という常子に、泰文は感謝の意を述べる。そして「片付けが終わったらお茶にしよう」と。この言葉こそ、東堂が待ち望んでいた言葉だった。無事、目玉企画の模様替えを終えた常子たちは、記事の執筆に取り掛かる。そこへ花山がスカートを履いて現われる。女性向けの雑誌を作っている以上、編集長は、女性の感覚を理解していないと話にならない。そこで、少しでも女性を理解するため「今日1日、この格好で過ごす」を言って高らかに笑うのだ。やはり、花山は変わった人だと改めて思う常子たちだった。

 

昭和23年。雑誌創刊から1年半の月日が流れた。以前、常子が勤めていた甲東出版が倒産。戦後、出版社が乱立する中で、時代の波に乗り切れなかったのだ。一方、常子たちの「あなたの暮し出版」は徐々に売上を落とし、次号の出版が危ぶまれる事態となっていた。鞠子から広告を取る案が出るが、花山は頑として受け付けない。広告を掲載するということは雑誌の一部を売り渡すことで、公平な記事作りに支障をきたすというのだ。

imageそんな折、小橋家に懐かしい客が訪れる。それは、かつて世話になった宗吉(ピエール瀧)と照代(平岩紙)だった。高崎の家は空襲で焼けてしまったが、娘の富江(川栄李奈)もその夫の長谷川(浜野謙太)も無事だという。孫の松吉は7歳になったと嬉しそうに話す宗吉たち。しかし、まつ(秋野暢子)は戦後、体調を崩して亡くなっていた。しんみりとする常子たちに、御墓参りに行こうと君子(木村多江)。東京に戻り、今度は仕出し屋ではなく流行し始めている洋食屋を開くつもりだという宗吉たちは、常子たちの成功を喜ぶ。「自分のことのように誇らしい」と照代。宗吉は、社長の常子にとって社員は家族と同じ、「とと姉ちゃんが守る家族が大きくなったということだ。頑張れ」と激励する。

 

しかし、号を重ねるごとに『あなたの暮し』の売上は落ちていき、常子たちは次第に深刻な資金不足となっていく。広告を載せる以外に手はない。このままでは水田を解雇しなければならなくなる。経営者として苦渋の決断の迫られる常子は花山から許諾を得ようと説得するが、済んだ話をするなと一喝されてしまう。悩んだ末、花山に伝えず広告を載せることに決める常子だが、花山を心酔する美子は不満を露わに。谷(山口智充)からは正しい決断だと擁護されるも、どこか不安を払拭できずにいた。

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同じ頃、花山は闇市で売られているパンを見て、小麦を使った新しい料理を次の特集にすることを思いつく。国からの配給は小麦粉がほとんどだが、家にはパン焼き器がない。小麦粉の調理法を知らない日本人が思いつく料理は、うどんかすいとんくらいしかないというのが現状だ。ヒントを得て嬉しそうに編集室に戻る花山。そこに広告を載せた新刊が出来上がる。常子は、最新号を手に、広告を掲載したことを花山に報告する。資金が足りず、こうするしかなかったと説明する常子。もう君と雑誌は作れないと、花山は部屋から出て行く。「編集長は辞める。広告のことは進退をかけるほどの大きなものだった」と。雑誌の内容自体は全く変わっておらず、資金がなくて雑誌が出せなくなれば、社員の給料が払えないと説得する常子。しかし花山は「金のために、魂を売るのか!」と全く相容れず、会社を後にする。

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残された常子たちは、花山抜きで企画会議を始める。納得のいかない美子は、花山を連れ戻せと常子に詰め寄るが、それができずに悩む常子。一人自宅に美子は、君子から常子と花山が話すきっかけが必要だと聞き、あることを思いつく。翌日の会議で、小麦粉を使った料理を提案すれば、読者が喜ぶと話す美子。驚く常子たちは、美子の案を次号の目玉企画にすることを決める。一方、花山は新しい働き口を探し始めるのだった……。

 

第18週は、『常子、ホットケーキをつくる』。美子の提案で、「あなたの暮らし」次号の目玉企画を小麦粉料理特集に決めた常子たち。常子は、梢(佐藤仁美)たちの意見を元にホットケーキを特集の中心にすることを思いつく。そんな時、広告主が現れ、得意先が考えた料理を雑誌に載せて欲しいと言われる。常子は悩んだ上でその申し出を断り、広告はもう取らないと告げる。美子は花山の力を再び借りようと谷を訪ね、一緒に花山を説得してほしいと援助を求める……。

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