「僕の部屋には、カオリからもらった手紙とかお土産とか、いろいろあって……。そういうものを見ると、彼女のことを思い出しますね。あれから7年ですか。僕にとっては、あっという間でした」
目に涙を浮かべながらそう語るのは、歴史学者で日露文化センター代表の川村秀さん(83)。歌手・川村カオリさんが’09年に38歳の若さで亡くなってから、7月28日で7年をむかえた。
いまも多くのファンたちに愛されているカオリさん。彼女は’71年に秀さんとロシア人の母・エレーナさん(享年46)の間に生まれた。
「カオリが少女時代を送ったのは東西冷戦時代で、日本とソ連は敵対する陣営でした。だから妻もカオリもすごく苦労したんです。’83年にソ連の戦闘機が大韓航空機を撃墜したときには、カオリは学校の先生から『ソ連に帰れ!』なんて言われたこともありました」
’99年にギタリストのMOTOAKI(40)と結婚し、’01年には長女・るちあさんも誕生。だが、幸せは長くは続かなかった。’04年、乳がんにかかっていることがわかったのだ。秀さんに見せてもらった当時の日記には、彼女の悲痛な思いがつづられている。
《9月14日。何ということだろう。MOTOAKIとるーを送ってノホホンと映画を見ていた時に、何げなく胸に手をやったら、大きなしこりが》
《9月15日。私を連れていかないで。まだ連れていかないで。お願い。るーの側にまだいさせて》
夫・MOTOAKIとは’07年に離婚しており、娘のためにも絶対に死ねない……。カオリさんは左乳房の全摘手術を行ったが、’08年には転移が発見された。放射線治療に抗がん剤と、治療のために必死に努力を続けたが、再発から1年半後、天に召された−−。
実はカオリさんは、亡くなる3年前ごろ、秀さんにある告白をしていた。かつて交際していた有名俳優からプロポーズを受けていたというのだ。
「カオリがMOTOAKIと結婚する前のことだったようです。その方とは年齢差もありましたし、価値観も合わなかったようで、カオリのほうからお断りしたそうです。私から見てもとても感じのいい方ですし、その話を聞いた当時は、カオリの夫婦仲もギクシャクしていましたから、『彼のプロポーズを受けておけばよかったのに……』なんて思ったこともありました。カオリの葬儀にも参列してくださっていましたね」
秀さんは現在、カオリさんの回顧録の執筆準備もあり、忙しい日々を過ごしている。