平安の昔から「花洛」とも称されてきた京都。“花の都”を意味するその名にふさわしく、4月に入ったばかりのその時季、満開の桜が美しく咲き乱れていた――。
3月21日で全国の緊急事態宣言がすべて解除されたとあって、古都もそれまでの閑古鳥の日々を終え、春たけなわを愛でる人々で少しずつにぎわいが見られるようになっていた。この後、再び全国で感染者が増え始め、4月12日からは京都府内でもいわゆる“まん防”が適用されることになるのだが、ちょうど自粛ムードが始まる前のはざ間の時期のことだった。
京都駅からさほど遠くない通りを、グレーのマスクに黒いキャップをかぶり、Gジャン姿で悠然と歩く男性がいた。嵐の大野智(40)だ。
彼と歩調を合わせ、ピッタリ寄り添っているのは、小柄でかわいらしい雰囲気をもった、30歳前後とおぼしき女性だ。ピンクのマスクが桜とよく調和している。
通りに面したある旅館の前に着くと、彼女は携帯電話を取り出し、外観の撮影をし始めた。初めて訪れたのだろう、この訪問を心待ちにしていたように、熱心に撮り続ける。そんな様子を大野は後ろで優しく見守っている。
彼女が撮影し終わると、2人は旅館の玄関へと入って行った――。