住んでいた場所は違っても、年齢が近ければ「そうそう! わかる」って盛り上がれるのが、青春時代、支えになった曲の話。活躍する同世代の女性と一緒に、“’80年代”を振り返ってみましょうーー。
■大人のレールには簡単に乗らないアイドル
「数々の人気アイドルが輩出された花の’82年。中森明菜さんや堀ちえみさん、松本伊代さんらとともにアイドル界を盛り上げたのが、『微笑少女。君の笑顔が好きだ』のキャッチフレーズでデビューした小泉今日子さんです。ただ、意外にもデビュー曲の『私の16才』、続く『素敵なラブリーボーイ』(ともに’82年)などは、ヒットチャートでベスト10入りしませんでした」
そう話すのは、世代・トレンド評論家の牛窪恵さん(54)。
キョンキョンの人気が不動のものとなったのは、髪をショートにして歌った5枚目のシングル『まっ赤な女の子』(’83年)。以降は『艶姿ナミダ娘』(’83年)、『渚のはいから人魚』(’84年)、『なんてったってアイドル』(’85年)とヒットを連発するようになる。
「何を着ても、どんな髪形でも似合ってしまうのがキョンキョン。丸顔でもなく、シャープすぎず、小顔で、目、鼻、口の位置なども完璧。キョンキョンの顔をAIで分析したら、完璧な黄金比率の顔立ちだと測定されそうです(笑)。また、堂々と政治的な発言をしたり、自分で製作会社を立ち上げて独立するような“男前”な印象が強いですが、アイドル時代から、普通のアイドルのように大人のレールには簡単に乗らず、個を持っている雰囲気がありました」
『100%男女交際』(’86年)など、ストレートな歌詞のアイドル路線の曲が続いた後、キョンキョンの新たな個性が光ったのが『夜明けのMEW』(’86年)。シングルレコードのジャケットに映るキョンキョンは、はつらつとした笑顔ではなく、少し物憂げで、大人びた表情だった。
「しっとりとした大人の曲で、制作陣は作詞・秋元康さん、作曲・筒美京平さんという夢のような組み合わせでした。当時から、ファンならずとも『MEWって何?』という疑問の声が聞かれました。詩はさまざまな解釈がなされるものですが、“猫が甘えている声なのではないか”というのが、一般的な見方だったと思います。秋元さんの独特な世界観も魅力的な歌でした」
次にリリースされた『木枯しに抱かれて』(’86年)によって、完全に“大人の小泉今日子”が誕生。’90年代に入ってからの、さらなる活躍の原動力となった。
「田村正和さんと共演した『パパとなっちゃん』(’91年・TBS系)の主題歌『あなたに会えてよかった』では作詞に挑戦。いまも名曲として歌い継がれています」
【PROFILE】
牛窪恵
’68年、東京都生まれ。世代・トレンド評論家でマーケティングライターとして『ホンマでっか!?TV』フジテレビ系)など多数の番組で活躍